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出版社内容情報
ただ1つの都市マドリード。妄想と現実が混ざりあった都市<マドリード>を背景に、嫉妬/偽装/計略/簒奪が織りなされる美しくも謎めく物語
内容説明
妄想と現実が混ざりあった都市“マドリード”を背景に、嫉妬/偽装/計略/簒奪が織りなされる美しくも謎めいた物語。
著者等紹介
マルセロ,J.J.アルマス[マルセロ,J.J.アルマス] [Marcelo,Juan Jes´us Armas]
1946年、カナリア諸島ラス・パルマス生まれ。作家、批評家。マドリードのコンプルテンセ大学で文献学、古典文学を専攻。1974年、『絨毯の上のカメレオン』でガルドス賞受賞。『昏睡状態』(1976年)、『神々自身』(1989年、プラサ&ハネス賞受賞)、『ほとんどすべての女性』(2004年)といった作品を残しているほか、ラテンアメリカ文学に精通する批評家としても著名で、『バルガス・リョサ―“書く”という病』(2002年)は特に評価が高い
大西亮[オオニシリョウ]
1969年、神奈川県生まれ。神戸市外国語大学大学院博士課程修了(文学博士)。現在、法政大学国際文化学部准教授。専攻、ラテンアメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
31
最初にローレンス大佐が皆を操ってアダの呪いを解いたこと、そのためにアナ・ルアルカとウンブロサ伯爵が死ななければならなかったことが提示されます。回想は、語る範囲を狭めたり広めたりしながらその周りを巡り、2人の死と皆の夢の挫折が繰り返し語られ、だんだんと忽然と姿を消したという大佐は本当に存在していたのかという疑念ばかりが強くなります。なので、最後の場面はただの妄想なのか大佐の魔術なのか判然としないのですが、ただ天性の踊り手だったというアナ・ルアルカの時空を越えた美しい跳躍を見たように思ったことは事実なのです。2016/06/24
mejiro
11
かつて映画監督を志し挫折した男。<私>は彼の語りに他の伝聞を交え物語を綴る。登場人物は芸術に魅了された人々。彼らは名声を求めるも夢破れる。バレエの天才少女さえ、栄光の未来を断たれる。すべての破滅を仕組んだのはローレンス大佐だ、と男は主張する。大佐は何者なのか?芸術という、神秘的なベールに包まれた世界と複雑な人間関係が織りなすミステリアスな物語。少しずつ角度を変えながら繰り返すエピソードの迷路をさまよううちに、思いがけない場所に行き着く。現実と幻のあわいに佇むような読後感だった。2017/08/23
rinakko
9
美しくも雑多、虚実綯い交ぜになったマーブル模様が万遍なく押し広げられていく作風に、少しく戸惑いつつひき込まれた。本物と偽物はまず並べられるが、奇妙な逆転の現象を引き起こす。それは錯覚に過ぎないのかも知れず、ふっと目眩のする読み心地が妙味であった。執拗に繰り返される偽装や剽窃のモチーフ…その変奏。失意にまみれたかつてのゴーストライターのとめどないお喋り、エバ・ヒロンをめぐる恋愛、存在自体が幻想めいたローレンス大佐の恐るべき力…などなど。先の読めない多面性に惑わされたけれど、その複雑さが読みどころで面白かった2014/05/01
qoop
7
真偽不明の物語に絡め取られたような語り手。現実が妄想に上書きされ、複数人の人生に異なる筋書きが当てられていく。不安定で狂躁的な語りのリズムで語られる陰険な悪意に満ちた陰謀。登場人物たちの人生に惹かれた補助線は空想から生まれた歪みなのか、それとも魔術的な正しさを備えているのか。妄想は共有されているのか、語り手一人の閉じた世界の出来事なのか。誰も何も保証しないまま先の見えない物語は進んでいく。旧市街の裏路地に迷い込んだかのような悪夢に似た、しかし同時に古典的な筋立てだと感じた。2018/11/28
刳森伸一
5
真実と見紛う作り話をでっちあげることのできるレオ・ミストラルから聞いた話と、画家でもあるウンブロサ伯爵の妻エバがまるで詩のように書いた日記の盗み見から「私」が再構成した、ローレンス大佐こと石油ブローカのパトリシオ・クラウンが人々を操って起こしたとされる事件。その全貌は、螺旋を描くように行きつ戻りつ語られる中から徐々に顕わになってくるのだが、それは存在すら怪しいローレンス大佐を中心に回る信頼できない物語だった。真偽の境界線を犯す強迫観念に駆られたような語りに圧倒された。2018/10/02