内容説明
18歳で光と音を失った著者は、絶望の淵からいかにして希望を見出したのか―米国TIME誌が選んだ「アジアの英雄」福島智氏初の人生論。
目次
プロローグ 「盲ろう」の世界を生きるということ
第1章 静かなる戦場で
第2章 人間は自分たちが思っているほど強い存在ではない
第3章 今この一瞬も戦闘状態、私の人生を支える命ある言葉
第4章 生きる力と勇気の多くを、読書が与えてくれた
第5章 再生を支えてくれた家族と友と、永遠なるものと
第6章 盲ろう者の視点で考える幸福の姿
著者等紹介
福島智[フクシマサトシ]
1962年兵庫県生まれ。3歳で右目を、9歳で左目を失明。18歳で失聴し、全盲ろうとなる。1983年東京都立大学(現・首都大学東京)に合格し、盲ろう者として初の大学進学。金沢大学助教授などを経て、2008年より東京大学教授。盲ろう者として常勤の大学教員になったのは世界初。社会福祉法人全国盲ろう者協会理事、世界盲ろう者連盟アジア地域代表などを務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kawai Hideki
115
サブタイトル通り。9歳で失明、音を頼りに生きようとするも、18歳で聴力も失ってしまった著者が、宇宙の果てのような暗闇と静寂の中から、生きる道を見つけていく物語。母親が、点字タイプライターのキーに見立てて打った「さ と し わ か る か」の言葉をきっかけに、他者とのコミュニケーションの手段が開け、他者との関わりが生まれ、「生きる」という実感につながっていく。著者の経験を裏付けるために引用される、ヴィクトール・フランクル、ドストエフスキー、トルストイ、谷川俊太郎、北方謙三、など、数々の名著の言葉も心を打つ。2015/09/26
chimako
92
人間のスケール(思想の幅や奥行き)は一体何によって決まるのだろうか。目も見えず耳も聞こえず、しかし常に考え他人を勇気づける。著者のこれまでを読みながら圧倒され続けた。「しさくはきみのためにある」著者が聴力を失った時に友人が手のひらに書いた言葉。すばらしい。慰めでもただのいたわりでもない、激励だと感じた。勝ち組負け組という言い方をしながら人を羨んだり蔑んだりする品の無さにうんざりしている。生きていくというのはそう言う事じゃない。残念だがうまく言葉が出ない。2015/11/01
ふう
84
光と音のない世界、自分の存在さえ認識できないような世界。作者はそれを光のささない宇宙空間と表現しています。そして、そんな空間から自身を解放してくれたのは「言葉」だったと。 読友さんの感想でこの本のタイトルを目にしたとき、わたしも苦しい経験をしたときに「言葉」に救いを求めたことを思い出しました。言葉によるコミュニケーションの仕組み。読書が与えてくれた力や勇気。どのページからも、人が生きる意味について共感し考えさせられる言葉が伝わってくるすばらしい本でした。2016/08/25
たいぱぱ
79
目も見えない耳も聴こえない、盲ろう者にして東大教授・福島智さんが自身の経験を元に読者に「生きるヒントを見つけて欲しい」と著した一冊。自分の中に宇宙を持つ福島さん達の世界を少しだけ垣間見れた気がしました。福島さんの「言葉は魂と結びつく働きをする」、北方謙三さんが福島さんに言った「先生の言葉は鼓動です」は心にズンと響きました。僕らでも難しいと感じる人との言葉のやりとり。福島さんたちなら尚更「言葉」を大切にし、命綱とも言える宝物なんだろうな。言葉の大切さを今更ながら噛み締めてます。福島さん、勉強になりました。2021/05/29
jam
77
光と音のない世界を漆黒の宇宙にたとえる福島智。18歳で盲ろう者となった彼が人びとに光を掲げる。それは、当時、友人が手のひらに書いた「しさくはきみのためにある」という指点字から始まった旅。やがて彼は思索を深め「コミュニケーションという光」が、漆黒の海を航海する彼の灯台であり錨であることを自覚する。漆黒の宇宙で彼は決して孤独ではない。彼の人生において彼が幸福であることは、彼自身の信念においてのみ存在する。それは与えられたわけでもなく与えられるものでもなく、ただ在ること。この世界の円環を遥かな宇宙から俯瞰する。2023/08/28