出版社内容情報
「私は、誰ですか?」──戦後70年、今やすっかり忘れ去られている中国残留孤児。彼らの苦悩は2世、3世の時代になった今も続く。ノンフィクション作家・平井美帆が「戦争」が生んだ傷跡の今を抉る。
内容説明
かつて、日本は戦争をしていた―。戦後70年、今も自分の名前、肉親を探し続けている人々がいる。中国の養父母に育てられ日本に帰国した「残留邦人」たちとその家族たちの物語。哀しくて、強くて、楽しくて、情に厚くてちょっとそっけない…。そんな愛すべき人々のこれまでの道のりを、丹念な取材を通して描くノンフィクション。
目次
第1章 四つ目の名前
第2章 我是淮(私は誰ですか)?
第3章 二世という運命
第4章 広島へ―「秧歌の舞」
第5章 中国残留孤児の家
第6章 日中友好の小学校
第7章 祖国へ
第8章 忘れ去られた日本人
第9章 終わらない旅
エピローグ 孤児の涙
著者等紹介
平井美帆[ヒライミホ]
1971年、大阪府吹田市生まれ。ノンフィクション作家。1993年、南カリフォルニア大学舞台芸術学部卒業。アメリカ在住の頃から現地の情報誌に執筆する傍ら、日本の雑誌に海外ルポを寄稿。2002年に帰国(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
勝浩1958
11
中国残留孤児に関する本を読むと、どうしてもテレビドラマ『大地の子』を想いだしてしまいました。戦争によってかけがえのない親を兄弟姉妹を祖国を失い、そして過ぎ去った時間は二度と戻ってこない。2015/11/30
お萩
5
仕方がないと諦めることだけが救いになる、それって、なんて苛酷な状況だろう。書かれていることですら私の想像は現実に塵ほども及んでいないだろうと思う。「恥」の意識についてもだけれど、思い出すのも苦しいことが語られ、こうして手を伸ばせば知ることのできる意味をもっと考えたい。無知ではいけない。2016/06/23
Lilas
3
先に『ソ連兵へ差し出された娘たち』を読んで圧倒されたので、こちらも読んでみました。『ソ連兵へ〜』の前編とも言える内容で、こちらも力作。ただ自分が子どもの頃テレビで中国残留孤児の肉親探しのニュースを見て背景を知らず反発を覚えたこともあったので、申し訳ない気持ちでいっぱい。悲しくて涙が出た。 この著者はジェンダー的視点、そして時に自身の感情を明確にあらわすところが特長と感じたが、その按配が良く、大変読みやすかった。2022/04/04
Kaori
3
戦後、中国残留によって何とか生き延びた日本人が経験したこと、帰国後も社会に居場所がなかったり身元不明のまま自分が誰なのか分からなかったりという事実、二世三世の思いなど、いろいろ衝撃的でした。2016/01/10
佐藤みつ恵
3
戦争に奪われた祖国や家族を思う心。凄惨な記憶。中国でも日本でも直面する差別。差別は二世三世へも向けられる。日本人の子を我が子のように育てた中国人夫婦。配偶者の祖国への思いに寄り添い、ともに日本へ移住した中国人の夫や妻。一つひとつ胸にくるのだけど、あとがきの「多様な文化背景を持つ帰国者家族が教えてくれるのは、戦争がもたらす癒えない傷、平和の尊さだけではない。人間社会を生き抜いていく強さ、ともに生きていく楽しさでもある」という部分もとても伝わってくる本だった。過去の記録だけでなく、「いま」が記されている良書。2015/12/06