プルースト (改訳版)

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プルースト (改訳版)

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  • サイズ B6判/ページ数 153p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784796701785
  • NDC分類 950.28
  • Cコード C1098

内容説明

現代文学批評の最高傑作。サミュエル・ベケットのプルースト論。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

夜間飛行

64
プルーストは作中人物を《歳月に頭を突込んだ巨人》に喩え、彼らが《時間の中でこんなにも遠く隔てられたあれらの時期に同時に触れる》といったが、ベケットはそれを《時間の犠牲者、囚人》といっている。過去に縛られるのは、《他人が正餐を食べるのを眺めながら空腹を満たそうとするのと同じ不条理》なのだと。二人の作家の人間観はある一点で重なり、別の方向へと広がっていく。内容と相俟って文体にも興味津々。まるで目の前で書かれたばかりのように紙に引掻き傷を残す文体。25才のベケットは、彼だけのやり方で「生」と切り結んでいるのだ。2016/05/15

たーぼー

53
本書はプルーストの生涯を語るのではなく、あの長大な歴史的作品について考察するものである。けして簡単ではない作品の方程式を解きほぐし、かつ美観を損ねず冷静に吟味できるのはベケットを置いて他にいないだろう、との判断で手に取った。時間、記憶等、その卓抜に統制された複数のセクションから形成される論理の数々。特に時間について《永罰と救済というあの双頭の怪物》と看做し、第一検討に据えて展開される論考には、目から鱗が落ちる事この上なし。まるでプルーストの意向に従って代弁しているようだが、独自色も垣間見せるのが興味深い。2016/12/18

SOHSA

36
《図書館本》ベケットが書いた修士論文である本書は『失われた時を求めて』論であり同作を通して分析したプルースト論でもある。「プルーストの方程式は簡単では決してない。」という出だしの一文はいきなり読み手の心をぐいとつかむ。そしておもむろに『失われた〜』の最大テーマである時間についての考察が続く。そのとおり!と肯んずる点やなるほどと腑に落ちる点がある一方、はてと首を傾げる点や言葉足らずでは思う点も多々ある。そうして行きつ戻りつを繰り返しながら読み進めるうちにこれはプルースト論のみならず(→)2018/12/31

かふ

22
ベケットのプルースト論はわかりやすい。これがベケット文学の出発点でもあった。ベケットは泥から始める。「そして世界は泥である レオパルディ」レオパルディはイタリアの浪漫派の詩人。イタリアに浪漫主義は咲かなかったのは、ナポレオン戦争の戦後処理で保守派が台頭したから。その犠牲となった死者たちが泥だったと。詩人が描いた夢はすべてペシミズム(泥)に覆われていく。だからプルーストのような作家には泥を浴びせたい。しかし、その泥から植物は育って花が咲く。それはプルースト『失われた時を求めて』そのものだと。2022/06/18

渡邊利道

6
ベケット24歳のときの修士論文であるプルースト「時」論。レオパルディの「泥」をエプグラフに、不透明な世界とと浮かび上がる文学(芸術)の夢を複雑なレトリックで率直に語った評論。若きベケットの潔癖さや思考の射程がいろいろとうかがえて大変面白い(とくに初期作品との関係はあからさまだ)。プルーストにおけるアレゴリーの欠如や、人物の直物的有り様や、記憶と習慣、愛について、といったトピックを奥行きのある記述で論じる。批評というか、文学が教養を当然の前提にしていた時代というものも感じさせられる。2018/03/03

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