内容説明
この本は、主に私が出会い、いっしよに悲しみ、怒り、闘ってきた人について書いている。「人」を書いたのであって、「病気」を書いたのではない。病にたおれた人とそれを見守る人の、悲しみとぬくもりを書きたかったのである。「人」のみせてくれた“生きざま”“死にざま”はそれぞれ私には感銘深い。その中で、時の風化に耐え、なお鮮やかに脳裏に甦る情景を書き綴った。ここにおさめた三十余話の小話に、私はそんな“生きていること”の無言の主張を託した。
目次
第1章 素晴らしい人がいて
第2章 ある女性の道のりが
第3章 慕わしく恋しい家人よ
第4章 老いと人生の絆から
第5章 希望の中味と風景は
第6章 医の婆、世の婆
第7章 こころの医者として
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サト
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活版印刷特有の凹凸が感じられる。人は人に生かされ癒やされ、しかし人の中で再発する病。家族が結核になってねと話すように、精神病になってねと話せる社会になってほしい。そう語る生きる達人の宗ちゃんや息子の気性の激しさは病気由来と理解したホンカンの、家族だけでなく地域への働きかけで一人ひとりの救いになる活動。保健婦と医師の根気強さが書かれる。鍵と鉄格子付きの病棟へ潜入した医学生の話は一読の価値あり。患者と共に患者として過ごす日々では温かく生き生きとして見えたのに、医師として患者を見るとみな薄汚れてグズに見えたと。2023/05/08