世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい

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  • サイズ B6判/ページ数 283p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784794965677
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0036

内容説明

地下鉄サリン事件を境にして、日本のメディアの現場は「右へならえ」的思考停止状態に陥り、さらに9・11テロ事件以降、国際的なレベルでもこの思考停止の輪は広がった。いわく、狂信者、残忍な凶悪集団、ならず者国家、正義対悪の枢軸の闘い…。しかし、はたして世界は、このような善悪の二元論で単純化できるものだろうか。オウム信者も、アルカイダもタリバンも、イラクのバース党員も北朝鮮の工作員も、皆ひとりひとりは、笑い、泣き、怒りながら日々の生活を営む生活人。だが、そうした他者に対する想像力を失うとき、人びとの間に悪夢のような憎悪の連鎖が生まれる。「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」。多様な価値観をもつ人々がお互いに共存できる社会に向けて、いまわたしたちにできることはなにか。気鋭のドキュメンタリー作家による、21世紀への希望を込めたノンフィクション・エッセイ。

目次

1章 日本がオウムで失ったこと、世界が9・11で忘れたこと(ポスト9・11のアメリカで『A2』を上映する;オウムですべてのタガが外れた日本社会;その後のオウム信者撮影日誌 ほか)
2章 ドキュメンタリーの理由(小人プロレスラーたちの「それから」;忘れられない少女の表情;ゆったりと静かに揺れ続ける眼 ほか)
3章 かくも完璧な世界(戦後日本よ、おまえは間違っていなかったはずだ;「世論」という圧倒的なチャンピオン;ただこの事実を直視しよう ほか)

著者等紹介

森達也[モリタツヤ]
テレビディレクターとして、ドキュメンタリー作品を数多く演出。98年、自主制作ドキュメンタリー映画『A』を公開、海外でも高い評価を受ける。続編の『A2』で、山形ドキュメンタリー映画祭市民賞・特別賞を受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

踊る猫

33
当たり前のことを書くと、人は自分の価値観というフレームをなかなか出ることができない。そこから出るためにこそ、森達也のような心優しきアウトサイダーの声を聞き、そしてそれだけにとどまらず自分の内なる両親と自己内対話を重ねる必要があるのだろう。オウム真理教を相変わらず狂人の集団と見なすのもいいかもしれない。だが、そこにたどり着くまでにぼくたちは森が体験/実践しているような自己内対話と葛藤を繰り広げているだろうか。それについて考えるのも一興ではないかと思う。読みながらここまで自分のフレームを壊し続ける姿に畏怖する2023/12/17

Tsuka

10
メディアに叩かれ、皆に叩かれている人がいても、公平に見て接してあげよう。思考停止は危険だ。世の中の人の憎悪を集めるパブリックエネミーとされている人や団体も本質を見てあげるべき…言われるが、修行の足りない自分には難しいことかもしれない。オヤジの呟きみたいな本だが、その意味で森さんはスゴイ…のかなぁ。 追加の感想…森さんではない人が作った映画について書かれていた。タイトルとは真逆なもの。お爺さんたちの行った戦争での残虐行為、生々しく恐ろしく記憶に残った。 2020/12/05

すん

4
2003年の本。著者の映画A2の公開前後の時期の雑誌コラムをまとめた本。印象に残った話はシリアの映画祭に行ったときの青年ナジーブが日本に失望したという話。「日本には本当に期待していた。先進諸国の中で唯一の非キリスト教国家で太平洋戦争では原爆を落とされ敗戦したのにその後の経済成長や平和憲法という理念などあらゆる意味でアラブ諸国の手本になる国だと思っていた。だけどテロに対して報復を宣言したアメリカに対して日本は他のオプションを呈示できる国だったはずなのに何も示せなかった。日本には一番失望させられた。」2019/08/19

抹茶ケーキ

0
映画監督のエッセイ集。すごく心動かされたから上手く要約できないけど、普通の人が行う悪とそれに対する無自覚な憎悪の肥大。世界は善い悪いという単純な二元論では語り尽くせないこと、そしてそうであるがゆえに世界は豊かなこと。そのあたりのことがテーマなんだろうなと思った。多くの人に読んで欲しいなと思った。2016/04/02

ないちゃー

0
善悪の二元論では決して世の中の問題は解決できないはずなのに、組織を形成した瞬間から人々はその事実と他者への配慮の心を忘れてしまう―そうした無念と憤りの想いが本書には綴られている。そして最も危険なことは、人は矛盾を抱えなければ生きてはいけない存在であるという事実から目を背けることだと著者は述べている。 http://knighchr.seesaa.net/article/252080942.html2012/02/13

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