内容説明
居場所がない―韓国籍を持って日本で生まれ育ち、日本にも韓国にも収まりきらない自分がいる。東アジアに「近代」が到来して以来、人々は「国家」や「民族」という枠組みを強いられてきた。著者はいつしか、そうした枠組みからはじき出されて流浪した人々の声を聴き取り、彼らの記憶を追いはじめた。歌・映画・ヒーロー…人も大衆文化も旅をする。移動し、夢を呼びさまし、生きる力を送り合うことで豊かになる。開かれた新しい「物語/世界」の始まりは、そんな風景のなかにあるにちがいない。枠に縛られた想像力を解き放つと、世界はどれほど違って見えるか。私たちの可能性はどれだけ広がるか―。変わらない私たちが変わるための「東アジア文化論」。
目次
プロローグ 私と名前と文化と世界
第1話 野蛮な野蛮な西洋文明
第2話 すれちがう眼差し、集まる眼差し
第3話 水俣発、流浪の風景のなかへ
第4話 「天然の美」を追って
第5話 演歌の源流
第6話 大衆文化の肉体
第7話 亡命ロシア人たちの東アジア
第8話 上海、シャンハイ、SHANGHAI
第9話 映画と「恨」と想像力
エピローグ 世界に私の居場所はあるか
わが若き友らよ!―あとがき
著者等紹介
姜信子[キョウノブコ]
1961年、神奈川県横浜市生まれ。85年、東京大学法学部卒業。86年、第二回ノンフィクション朝日ジャーナル賞受賞(現在、『ごく普通の在日韓国人』として朝日文庫)。2000年、『棄郷ノート』(作品社)で熊本日日新聞文学賞受賞。現在、熊本市在住。熊本学園大学非常勤講師
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