内容説明
医師に病名を告げられたとき、私は新しい人間になったのです―。1989年、ニューヨークタイムズの名書評者として活躍する著者は、前立腺癌を告知された。そのとき彼は、なぜか心の高揚を覚える。死が迫ったことによって、あたかも人生の謎が解けだしたかのように。自らに施される医療を克明に記しながら、病と死の文学をひもとく。人間性を喪失している現代医療のなかで、患者にとっての理想の医師を考える。そして病をわがものとし、乗り越えるために最も必要な、自分なりの死に臨むスタイルを探究してゆく。人生最期のときまで自分らしく生きる姿勢をウィットあふれる筆致で綴った、秀逸なメモワール。
目次
1 わが病いに酔いしれて
2 病いの文学にむけて
3 患者が医師を検査する
4 日記から
5 死の文学
6 膀胱鏡の告げたこと
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
paluko
9
原題はIntoxicated by My Illness、直訳すれば「病で酔っ払って(ハイになって)」という感じか。医療行為や同情の単なる対象や「犠牲者」になることを拒み、あくまでも自分のスタイルを貫いて死という人生の仕上げに全力を挙げる姿勢は、他のいわゆる闘病記とはまったく異質。「医師に興味をもってほしいのなら、患者は興味深い存在であるように努めるべきです。ただただ面倒をみてほしい、大事にしてほしい、あれも心配これも不安という態度ばかりとっていたら、医師が嫌悪の情をいだくのはしごく当然です」(69頁)。2022/10/21