内容説明
ひとりの老人と中学生の男女13人が、お寺に集まり輪になっている。「わたしはこう思うよ」。「いや、ぼくだったらこうだよな」…。いま、自分たちをとりまいている問題について話し合っている。だれが先生でだれが生徒かわからない。なんだか不思議な光景で、メダカの学校のようでもある。老人は哲学者の鶴見俊輔さん。この場を、「江戸時代にあった寺子屋なんだ」。そう話している。話題は、「大切にしたいものって何?」、「ムカツクことって何?」、「塾って何?」、「マンガって何?」。中学生のだれもが、悩んだり苦しんだり喜んだりしている問題である。だれにも相談できず、ひとりぼっちで悩んでいたら、この本を開いてみよう。考えるヒントがいっぱいつまった本。
目次
1 ムカツクことって何?(「いまの若者は」という口調;仲間はずれにされること ほか)
2 塾って何?(気楽なふんいきが好き;先生を選ぶことができる ほか)
3 マンガって何?(好きなマンガは『デビデビ』;ドラマの主人公になれる ほか)
4 大切にしたいものって何?(「バイバイ」というあいさつ;ジコチュウの自分 ほか)
著者等紹介
鶴見俊輔[ツルミシュンスケ]
1922年東京生まれ。哲学者。46年、雑誌『思想の科学』を創刊。65年、アメリカのベトナム戦争に反対する市民運動「ベ平連」に参加
南伸坊[ミナミシンボウ]
1947年東京生まれ。装丁家・イラストレーター・エッセイスト
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
32
鶴見氏は、塾体験を語っている(62頁)。学校の先生と違う塾の先生。ユウスケさんの作文にある見方に、鶴見氏は感心して、塾はかけがえのない息ぬきの場だ。先生がとてもおもしろい、という。学校だけが教育現場ではない。私も塾講師をしていた時期もある。学校の先生が立場上、言えないこともあったろう。私は言いすぎたから切られたかもしれないが。もちろん、塾へ批判的な生徒もいる(63頁にかけて)。それはそれで、小泉内閣時代の中学生像としてあり得るし、今もある姿だ。2016/07/02
ゆうゆうpanda
32
先日亡くなった鶴見氏。戦後を代表する哲学者とのことで興味が湧いた。先ずは平易な物からと思って中学生との対談をまとめた本書を。中学生目線に立って、親と先生をどう教育していったらいいかが議論される。そこには氏の、母の体罰により厳しく育てられた幼年期、戦後教育内容が180度変わり教科書を墨で塗り潰した経験、学校の枠に納まらずドロップアウトした学生時代が色濃く反映されている。氏の著作を読む際の手掛かりになりそう。親は悪役の設定だったが「最近、自分がこの親を選んだと思えるようになった。」という女子の発言で救われた。2015/08/29
Bartleby
7
どんな意見も否定せずそこからさらに話題を広げていく鶴見さんの対話の仕方は「教育再定義への試み」で紹介されていた帰真法のお手本だと思う。そして「親教育は持久戦」「自分の意見が変わるのは恐ろしいもの」「三人であることの意味」などの中学生のころに知りたかった知恵もさりげなく示してくれる。中学生でこんな先生に出会えた生徒たちがうらやましい。「中学生の頃だったらなんと答えただろう、他の生徒みたいにちゃんと意見を言えただろうか、今だったら?」と生徒の一員としてその場に参加しているつもりで読めました。2012/01/09
白義
5
鶴見俊輔は最高の教育思想家と実感する。親問題、子問題という分け方や、子どもが親、教師を試すということ、自分の問題を考えること。それを現役中学生と対話しながら、ここまで自然に大切なことを伝えられるのが凄い。76歳と14歳ですよ。特に、鶴見俊輔の元不良少年っぷりがうかがえるのが読んでいて愉快。自分の教師への反抗を、自分でいけないことだったとはっきり言う76のじいさんは、なかなかいない。問題はリアルで痛切だが、鶴見先生の言葉は許容力があって安心するものだ。雰囲気は違うがパーカーの初秋を思い出した2011/10/04
おとしん
2
人生において「親問題」と「子問題」を区別するって大人にも子供にも大切。自分の悩みは結構「子問題」に振り回されているような感じがした。漫画を読めなくなった理由も少し納得。2010/07/25