出版社内容情報
★本書は『書評空間 KINOKUNIYA BOOKLOG』にエントリーされています。
内容説明
20世紀は映像の世紀である。映画や写真などの複製芸術はどんな可能性をはらんでいるのか。巨大な思想家ベンヤミンの刺激あふれる先駆的映像芸術論。
目次
複製技術の時代における芸術作品
ロシア映画芸術の現状
写真小史
エードゥアルト・フックス―収集家と歴史家
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
40
『複製技術時代の芸術』では、主に映画が批評対象とされていますが、音楽の場合は同じことがいえるでしょうか。アーティストの音源を聞いて、ライブを観に行くとします。音源がいかに再現されているかを確認する作業のためにライブに行くひとが多いでしょうから、本来複製である音源にアウラをみて、一回性のライブが複製という逆転が起きます。人間の反復することの習性に訴えかける表現であり、複製技術の進歩と共に変遷してきた音楽の演奏には、複製とライブの逆転の問題がずっと付きまとっているのではないかと感じます。同じ曲を反復して聴くこ2019/01/28
浪
9
ヴァルター・ベンヤミンの著作の中では読みやすい部類に入るらしいのだがそれでも難解。映画は絵画と違い次々に場面が移り変わるため思索に入る暇がない。そのため観客の意識は散漫になるのだとか。正直なところこの本を読み解けるだけの知識と読解力を現在の私は持ち合わせていない。十年ほど寝かせてから読み直すことにする。2018/12/09
Happy Like a Honeybee
8
永劫回帰の教義。大衆芸術と史的唯物論の展開。 古代ギリシアでは鋳造と刻印のみが複製技術の手法であった。ブロンズ像や硬貨など現存する物も多々。「いま」「ここ」と言う芸術特有の一回性喪失を筆者は嘆く。中世では巨大壁画のため、それこそ命懸けの冒険を必要とした。芸術の複製が可能となり、大衆が芸術と接近可能となった利点もある。映画や写真など特定階級の嗜みが、人々に広まり全体的には芸術の進歩に寄与しているだろう。2016/05/29
月世界旅行したい
8
再読。2015/01/10
Ecriture
8
超古典。昔借りて読んだけど今回は購入して再読。オリジナルと複製に関して、儀礼や距離、時間と場所性などの論点を出しながら考察していく。新しいモノが出てきたときにそれまでの考えにそれを当てはめてちゃダメだよ&自分がその対象に没入してテストする視点で考えてみようってこと。アウラやオリジナルというキーワードに捉われがちだが、共産主義とファシズムという政治的な問題を意識して書かれてる部分には注意が必要。2009/04/25