内容説明
現代の医療システムは、患者生産工場と化し、人間の誕生から死までを技術の管理下におく。誤診、薬づけ、検査づけ…医療そのものから発する「医源病」こそ、今日のわたしたちの健康を脅かしている。「健康とは何か」という根源的な問いにたちもどって新しい病源にメスを入れ、世界中で先駆的な本として読みつがれる医療化社会批判の書。
目次
1 臨床的医原病(現代医学の疫学)
2 社会的医原病(生活の医療化)
3 文化的医原病(痛みの抹殺;疾病の創造と除去;死対死)
4 健康の政治学(反生産性;政治的対応策;健康の回復)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
19
一人めの子は大病院で、二人めは小病院で、そして三人めは自宅に助産師に来てもらって迎え、三人めでようやく人間らしいお産ができた。最初からこうすればよかったが今更やり直せない。百年前までは自宅で生れ自宅で死ぬのが当り前だったのに、今や揺籠から墓場まで医に支配された現代人は「自ら学び自ら癒し、自分で自分の道を見出すよりは、教えられ動かされ治療されることを欲する」ようになってしまった。医の全否定ではないが、医に支配されずに自らの体の声に耳を澄ませればおのずと何を食べどう生きるべきかは見えてくるはずなのだろう。2019/12/29
Daimon
2
ある閾値を超えることで、特定の目的に役立つはずのものが転倒した形で目的の自己否定に陥る―健康を推進する医学が、保険制度、薬剤の処方、老人施設、予防の市場化、「障害」の発見、病院での死……人々の自律的な統御を否定し、人々の健康を否定する。イリイチは、他律的管理に対して、自律的行動を回復し、バランスを図れという。一方、閾値を超え「文化的医原病」に達した社会の変革は、政治・法・制度的な承認によらねばならないとも言う。その歯止めには、合理化ではなく、進歩の迷妄を認識し「聖」なるものを再考すること…イリイチらしい。2021/08/01
mogihideyuki
1
メモ:P40「集約的教育の結果、独学者は雇用されず、集約農業は自作農夫を破壊し、警察の発展は地域社会の自己制御を蝕んでしまう。医療の悪質な拡大も同様の結果をもたらす。すなわち相互ケア、自己投薬を悪事、重罪であるとしてしまうのである。」P17「このような医学は、病にかかり社会に倦んでいる人々に、病み、不能であり、技術的修復を必要としているのは自分であるということを納得させるための企みにすぎない。」2017/02/24
健康平和研究所
0
解体のバイトで病院の石膏ボードなどをはがす仕事をたまたま読んでいる時にして石膏ボードのほこりまみれになって嫌だったので病院なんてなかったら良いのにと思った2016/01/25
ぷほは
0
イリイチのお仕事は今どんなふうに評価されているのだろうか。例えばルーマンの言うような機能分化した社会では、「脱~社会」という発想自体がナンセンスに映るのではなかろうか。というか、流し読みだが、大部分が医療化というより官僚性の逆機能を論じているようにも読めるので、当時の機能主義との関連とか気になる。グールドナーとかと交流あったのか? このへんの学説史はぜんぜんわからんので、誰か識者に聞いてみよう。2015/04/29