音楽から沈黙へ フォーレ―言葉では言い表し得ないもの…

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  • サイズ A5判/ページ数 451p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784794807052
  • NDC分類 762.35
  • Cコード C0073

出版社内容情報

ガブリエル・フォーレに興味がある貴方に贈る1冊です。
1988年に新評論から刊行された邦訳『アンリ・ベルクソン』に続いて、この度、V・ジャンケレヴィッチの『フォーレ』が遂に日本語で日の目を見ることになった。フォーレ研究家、J=M・ネクトゥーの言によれば、晩年、ジャンケレヴィッチはフォーレの音楽の中にベルクソン的な世界を見出して、次のように述べていたと言う。「フォーレの音楽には、ベルクソンを強く感じさせるような傾向が存在する。それは継続した流れ、つまり流動し、経過してゆく魅力のことであり、流麗さとも言えるものなのだ」。このフォーレについての著作は、彼の数多い音楽書の中でも最初のものにあたり、きわめて個性的で鋭い論法、確かな音楽分析と微妙に言い表された演奏表現、そしてこれらのものが独創的で彼一流の考えのもとに見事な統一感をもって繰り広げられている。そして歌曲に関する部分が全体の半分以上を占めてはいるものの、時にはその領域を大きく越えて、フォーレの様々な作品に触れ、さらにはドビュッシー、サティ、ラヴェル、リスト、シューマン、アルベニス、そしてロシアの作曲家達の作品との類似点なども、具体的に曲名や曲の一部を例にとりながら、幅広く論じているのだ。本書は、第Ⅰ部(歌曲)、第Ⅱ部(ピアノ曲と室内楽)、第Ⅲ部(美学)の他、巻末に収められた作曲家の二人の息子達に捧げられた追悼文、そしてフォーレの作品の調性別分類表などから成り、まさにフォーレの、言葉では言い表し得ない、魂の安らぎの世界に足を踏み入れた、珠玉の1冊と言えよう。ジャンケレヴィッチが語る熱の籠った美の世界に、親しみを持って耳を傾けていただければ幸いである。

内容説明

魂の安らぎ、流れゆく生命、無限の優美さ。フォーレ作品の美の世界を独創的論法で解き明かすフランス音楽書の至宝、待望の完訳。

目次

第1部 ガブリエル・フォーレの歌曲(ガブリエル・フォーレとその歌曲;一八九〇年以前;変ニ長調あるいは「いちばん楽しい道」(一八九〇‐一九〇五年) ほか)
第2部 ガブリエル・フォーレのピアノ音楽と室内楽についての考察(ガブリエル・フォーレのピアノ音楽;即興曲;ヴァルス=カプリス・舟歌 ほか)
第3部 曖昧さ、魂の安らぎ、そしてフォーレの作品の持つ魅力について(曖昧さを含んだ厳密さの中に見出される逆説;安らぎについて;魅力について)

著者等紹介

ジャンケレヴィッチ,ウラディミール[ジャンケレヴィッチ,ウラディミール][Jank´el´evitch,Vladimir]
1903年、ユダヤ系ロシア人の両親の下にフランスのブールジュに生まれる。E.N.S.(エコール・ノルマル・シュペリユール)に進み、28歳で学位論文を提出して教職に就く。大戦勃発で動員、レジスタンスを経験。51年にパリ大学文学部の倫理学担当教授になり、78年に退官。85年没

大谷千正[オオタニセンショウ]
1956年兵庫県に生まれる。作曲家・音楽学者。パリのエコール・ノルマル音楽院、ルエイユ国立音楽院卒業。80年にジョリベ賞、S.A.C.E.M.賞を受賞。88年にはパリ大学で博士号を取得。歌曲、ピアノ曲、室内楽作品のほか、管絃楽曲には『Vl.Vc.Orc.のための協奏曲』、『カンタータ歎異抄』など。リリースされたCDも数多い

小林緑[コバヤシミドリ]
1942年福島県に生まれる。東京芸術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修了後、フランス政府給費留学生としてパリ第四大学音楽学研究所留学。国立音楽大学教授、和洋女子大学非常勤講師。1999年度は本務校在外研究者としてパリに滞在、女性作曲家の情報収集にあたる

遠山菜穂美[トオヤマナオミ]
東京都に生まれる。東京芸術大学卒業、同大学院音楽研究科(音楽学)修了。平成音楽大学助教授、東邦音楽大学・大学院講師。専攻は19‐20世紀のフランス音楽

宮川文子[ミヤガワフミコ]
1948年滋賀県に生まれる。大阪大学大学院文学研究科修士課程修了。専攻はフランス文学。神戸松蔭女子学院大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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松本直哉

25
その最晩年の歌曲「船よ」で「いまだに満たされない大いなる出発」grands départs inassouvisを夢みた作曲家がこの歌詞につけた大胆な跳躍を伴う旋律は、76歳においてなお「幻想の水平線」の彼方へのエロティックなまでの希求が息づいていることを示す。現世的な触知可能なものを超えた存在しないものへの憧れを、フォーレの故郷アリエージュの、カタリ派の世界観と関連づける著者の考察には説得力があった。豊富な譜例に基づく楽曲の分析に作曲家への愛と尊敬がうかがえる。2017/02/18

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