出版社内容情報
今世紀に入って日本は小泉政権を経験し、情報提供の政治性について考えさせられる機会を多くもった。「ワンフレーズ・ポリティクス」に対抗するかのように、野党主導で選挙に「マニフェスト」も導入された。先の衆院総選挙では、政策の中身よりも小泉流の情報戦略が勝利したとまで言われた。このようなときこそ、現代の情報政治について、新たな視点で問い直すテキストが求められているのではないだろうか。
『情報政治学講義』は、「情報の政治性」を考えるための日本初のテキストである。これまでの政治コミュニケーション研究は、その多くがマスコミの政治報道研究であった。そのため、政治家の側の情報提供手法についての考察は不足しがちであった。政治CM、政治演説、インターネットを利用した選挙運動。こうした最近話題となっているテーマについて、そこに込められた政治的作為を論じたい。そのためには、新たな分析枠組として「情報政治学」を提唱する必要があると考えた。
講義は10講からなる。第1講では、情報操作や情報の秘匿といった情報政治学の課題について考える。第2講では政治演説と政治宣伝の概念を整理し、第3講から第5講では、政治広告、選挙情報、ネット情報という選挙をめぐる政治情報の現状を論じていく。
もちろん、マスメディアの政治的影響力やジャーナリズムの今日的あり方にも言及する(第6講・第7講)。またこれに呼応して、政権運営にあたる首相や大統領の情報政治手法、具体的には国民への呼びかけやメディア対策なども分析していく(第8講)。
市民の側がどのように政治情報を発信していくべきかも、当然議論される(第9講)。また、戦争など国際政治の舞台における政治情報の実情も詳しく分析する(第10講)。これら10の講義すべて,多様なエピソードを盛り込み、コンパクトでも中味の濃い現代情報政治論を展開したつもりである。
2005年は日本政治における大きな転換点となった。小泉首相の政治的言説やメディア対策手法が話題となる中、本書は新たな視点からの政治学を呼びかける。現代政治の理解に役立つ一書となることを願っている。(たかせ・じゅんいち)
内容説明
カエサルによる最初の「情報公開」から、ブッシュのネガティヴ・アド、小泉流ワンフレーズ・ポリティクスまで、多彩な事例をもとに「情報の政治性」を読み解く10の講義。現代政治の技術と感性を「情報」の視点から徹底分析。
目次
第1講 情報政治学の課題
第2講 政治演説と政治宣伝
第3講 政治広告
第4講 選挙情報
第5講 ネット情報と選挙
第6講 マスメディアの政治情報
第7講 ジャーナリズム
第8講 政権運営と政治情報
第9講 市民の政治情報技術
第10講 国際化する情報政治
著者等紹介
高瀬淳一[タカセジュンイチ]
1958年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。名古屋外国語大学現代国際学部・同大学院国際コミュニケーション研究科教授、早稲田大学政治経済学部・社会科学部・商学部講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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satoru_28
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ぽん教授(非実在系)