内容説明
ドラキュラ、フランケンシュタインの恐怖小説に表明されるブルジョワ社会の意識、資本主義の隠喩としてのシャーロック・ホームズ、絶対王政の崩壊を予言するシェイクスピア悲劇、バルザックに明らかになる都市型人間の誕生、ジョイス、エリオットによって告げられる資本主義の終焉、お涙ちょうだいの大衆文学に隠された意図…。記号学、心理学、社会学など、いくつもの分析方法を駆使することによって、ここに劇的に浮かびあがってくるのは社会の深層にある大衆の意識である。そして今、21世紀を目前にして、文学は高度情報化社会の深層意識の表明に最適の形式を模索している。
目次
インタヴュー フランコ・モレッティ―「21世紀は非ヨーロッパの世紀になるでしょう」
1 大衆文学の深層構造(恐怖の弁証法;ホモ・パルピタンス―バルザックに見る都市型人間;手かがり―ベーカー・ストリートと資本主義;涙の戦略―「哀しみの」文学におけるビルドゥングの構造)
2 文学の形式と時代(大いなる喪失―悲劇の成立と絶対王制の崩壊;長いお別れ―『ユリシーズ』とリベラル資本主義の終焉;『荒地』から人工楽園へ)
3 21世紀の文学に向けて(モダニズムのアイロニー―優柔不断という魅力;真理の瞬間;文学の進化について;魂とハルピュイア―文学の歴史誌学の目的および方法について)