内容説明
終戦直後、莫大な現金と戦勝国民としての特権を武器に、東京の一等地を次々と手中にした若き中国人がいた。上海をモデルに新橋「国際マーケット」をつくりあげた男は、尋常ならざる行動力で事業を展開し、敗戦国の繁華街に君臨する。男が異郷の地でめざしたものは何だったのか?「東京租界の帝王」と呼ばれた男の波瀾万丈の生涯を、本人の回想をまじえて描く出色のノンフィクション。
目次
第1章 銀座の空に札びらが舞う(十円札の紙吹雪;総理大臣宛ての内容証明郵便 ほか)
第2章 廃墟に現われた男(「私が話したら、殺されちゃうよ」;湖南省から日本統治下の朝鮮へ ほか)
第3章 東京租界と帝王の城(口をつぐむ生き証人;新橋駅前「国際マーケット」 ほか)
第4章 宴の残影(道玄坂を下る米軍戦車;家なき人びとの群れ ほか)
第5章 封印された「戦後」(日本の裁判権回復;弁護士・布施辰治との絆 ほか)
著者等紹介
七尾和晃[ナナオカズアキ]
石川県金沢市出身。ルポライター(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Willie the Wildcat
13
混乱の時代。その象徴の1つが「闇市」。”生きること”が命題の時代。特攻帰りのツワモノと共に、時代を成した王長徳氏。結局本著でも踏み込んだ記載がないのが残念。ただし、その人脈と人柄を表す逸話は満載。印象深いのは、師とも仰いだ弁護士宅への”下部温泉”の搬送。「民法162条」。戦後のどさくさがあっての現在、という点も否定できない。氏自身は満足された人生かもしれないが、時代からは寂しさを感じざるを得ない・・・。2012/09/30
澤田彰二
0
王長徳氏の人柄関するエピソードは、いろいろ楽しめたが、どうやって複数の闇市を作り上げたのかという経済面のエピソードはあまりつっこんだ記述が無かった。経済面のエピソードを読みたかっただけに残念。2013/11/16