ドキュメンタリーは嘘をつく

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 262p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784794213891
  • NDC分類 778.7
  • Cコード C0095

内容説明

ドキュメンタリーとは事実の客観的記録である―ほんとうにそうなのだろうか?すべての映像は、じつは撮る側の主観や作為から逃れることができない。ドキュメンタリーを事実の記録とみなす素朴で無自覚な幻想からは、豊かな表現行為は生まれようがない。だが、撮ることに自覚的で確信犯的な作品の中には、観る側の魂を鷲づかみにしてきたものが多々ある。本書は、ドキュメンタリーというものが拓いてきた深甚な沃野に向き合い、その悪辣で自己本意で、自由で豊潤な表現世界の核心へと迫るものである。たんなる映画作品論ではない。この現実世界の見方そのものを揺さぶる鮮烈な論考である。

目次

ドキュメンタリーに惹かれる
「客観的な真実」
オウム真理教を撮る
撮る側のたくらみ
フィクションとノンフィクションの境界で
わかりやすいマスメディア
全ての映像はドキュメンタリーだ
陽の目を見なかった企画
報道とドキュメンタリー
ドキュメンタリーの加害性
セルフ・ドキュメントという通過点
世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい
ドキュメンタリーは嘘をつく
ドキュメンタリー映画評

著者等紹介

森達也[モリタツヤ]
1956年、広島県呉市生まれ。立教大学法学部卒。映画監督、ドキュメンタリー作家。1998年、オウム真理教の荒木浩を主人公とした自主制作ドキュメンタリー映画『A』を公開。ベルリン・プサン・香港・バンクーバーなど各国映画祭に出品し、海外でも高い評価を受ける。2002年に公開した続篇『A2』は山形国際ドキュメンタリー映画祭で審査員特別賞および市民賞をダブル受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ゲオルギオ・ハーン

26
ドキュメンタリーディレクターでもある著者によるエッセイ。執筆当時(2003〜2004年頃)にマイケル・ムーアの作品が日本でもブームになり、メディアは「ドキュメンタリー映画ブーム」とした。しかし、著者は「マイケル・ムーアブーム」であり、ドキュメンタリー映画を事実を撮影したものではない、と否定するところから本書は始まる。映像作品とは制作者の意図が必ず入るものである、ドキュメンタリーの独自性とは作品のテーマについて制作者が自問し、葛藤しながら作り上げ、作品によって視聴者たちに問題提起をすることにあると読めた。2023/12/17

阿部義彦

16
草思社2005年刊。ドキュメンタリー作家、森達也さんが草思社のPR誌『草思』に連載した物。私自身映像と言えるのは、テレビも映画もアニメもほぼ見る事は無く、森さんの作品も一つも見てないのですが、唯一本を通してその活動内容や考えを知るばかりなのですが、兎に角読ませるし、スルーされていたタブーや規制にメスをいれて分かりやすく腑分けしてくれます。筒井康隆好きにはやはり共通するツボがあります。『ドキュメンタリーが描くのは、異物(キャメラ)が関与することによって変質したメタ状況なのだ』セルフドキュメンタリー論が白眉。2024/01/08

keiniku

12
再読。森達也って誰かわからずに読み始めて、そのあと、映画「フェイク」を見た後に改めて読んだ。ものを作る時に真摯に向き合おうと考えると、勉強と考察と実践が不可欠だと思う。それはどんなジャンルにおいても。自分の仕事の上でも、もちろんこのような思いは必要だ。毎回の仕事の度に思い返して自分を洗い直して取り組まねばならないと思った。 戦うこと、とにかく戦うことは大切だ。漫然と生きるまい。2016/12/13

ふう

10
ドキュメンタリー論としてもただ単純にエッセイとしても普通に面白い。なんでもいいからドキュメンタリーを観たくなる読後感。何事に置いてもだけど大切なのはバランス、そして自覚なんだよね。私はなにかと白黒つけたがるからこういう本を読むと勉強になるというか自分を振り返るいい機会になった(まぁちょっとズルいなって気もしつつw)。彼が24時間テレビをどう観るのかすごく興味ある。(今生天皇はとりあえず置いといて)中森明菜はまじで撮って欲しい。2017/10/12

mizzan72

9
うまく感想が言えないのだけど、僕がいわゆる「ドキュメンタリー映画」に感じていた幻想と信頼と疑念をすべて言葉にしてもらった気分です。本文中、強い主張の前には必ず「個人的意見」との断りがあるが、この本全体を支配する秩序とか信念にまったく淀みが感じられず論理的な乱れもない文章なので、なんというか、ただただ圧倒されて、同意も反論もできない気分を味わいました。森さんの映画はまだ一本も観ておりませんが、近くぜひ観てみようと感じる一冊でした。2017/02/03

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/561186
  • ご注意事項