内容説明
中国・満州における親父の行動はどこか奇っ怪で、あまりにも「訳ありのあやしい奴」。初めは関東軍のために働く満鉄の調査部員、次には理想に燃える協和会事務長、やがて共産主義者と思われるようになり、一転、北方国境の警備を務める一兵卒に…。その結果、実はソビエトの(あるいは日本の)スパイだったのでは?などと息子の前には疑問符が山と積まれて遺された。しかし、幼かった弟の衝撃的な死に様の記憶を糸口に、疑問の解明にのりだした著者はいつしか運命に導かれるようにして、作家・長谷川四郎の内面の秘密にたどりつく。従軍とシベリア抑留体験をもとに味わい深い佳篇を著した作家のミステリアスな内奥に迫る。
目次
1章 最初の晩餐
2章 生と死の謎
3章 父の正体
4章 面会と命拾い
5章 捕虜となって
6章 帰国と入国
著者等紹介
長谷川元吉[ハセガワゲンキチ]
1940年、満鉄職員長谷川四郎の長男として北京に生まれる。その後満州に移り、父四郎は地方都市の協和会事務長となるが、召集でソ満国境に駐屯中、ソ連の侵攻でシベリアに抑留。46年秋母親とともに満州より引き揚げ、多摩美大デザイン科を卒業。映画カメラマンになる。吉田喜重監督「エロス+虐殺」でスタート。その後「戒厳令」などの吉田作品をはじめ、馬場康夫監督「私をスキーに連れてって」など多数の作品の撮影を担当。テレビ・コマーシャルの作品は600
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