出版社内容情報
『世間胸算用』や『好色一代男』などの名作で人間の欲望としがらみを細大もらさず描き尽くした井原西鶴。本書は、『萩原朔太郎論』など数多の評論で知られる弁護士にして文学界の重鎮でもある著者が、その主要作品を読み解き、従来のイメージに一石を投じる斬新な西鶴論。現代にこそ読まれるべき西鶴の魅力をあらためて問いかける注目の好著。
内容説明
深甚無比の人間理解、現代によみがえる究極のリアリズム。義理と人情、情欲と算盤…。興隆期に生きた人間たちの本能と才覚としがらみをつぶさに描きつくした天才西鶴の真骨頂とは。詩人・大教養人が西鶴に挑む、現代においてこそ読まれるべき興趣深い人間像を読み解いた、斬新な西鶴論。
目次
『万の文反古』
『武道伝来記』
『武家義理物語』
『本朝二十不孝』
『好色一代男』
『好色五人女』
『世間胸算用』
『日本永代蔵』
著者等紹介
中村稔[ナカムラミノル]
1927年、埼玉県大宮生まれ。詩人・弁護士。一高・東大法学部卒、『世代』同人。1950年、書肆ユリイカから詩集『無言歌』を処女出版。詩集『鵜原抄』(高村光太郎賞)、『羽虫の飛ぶ風景』(読売文学賞)、『浮泛漂蕩』(藤村記念歴程賞)、伝記『束の間の幻影 銅版画家駒井哲郎の生涯』(読売文学賞)、自伝『私の昭和史』(朝日賞、毎日芸術賞、井上靖文化賞)著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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田中峰和
1
弁護士にして詩人でもある中村が西鶴をどのように読むのか関心を持って読んでみた。「好色一代男」や「好色五人女」についても書かれているが、面白かったのは、「武家義理物語」と「本朝二十不孝」。荒木村重の次男が東国に下ったときの話。家臣の式部は我が子と一緒に同僚の息子も同行したが、同僚の子のみ川に流されたので慌てた。これでは同僚に義理が立たぬと、無事に大川を越えた我が子に相果てよと命令し、川へ飛び込ませた。主君への忠孝は当たり前だが、同僚への義理も重んずる精神。武家出ではない西鶴は違和感を持って書いたことだろう。2016/07/27