出版社内容情報
知られざるラカンの全貌
本書は、精神病か神経症かを判断する「鑑別診断」に、
思想と臨床の両方から光をあて、
まったくあたらしいラカン像を提示しようとするまさに画期の書である。
そこから50年代、60年代、70年代と
ラカンに一貫したテーマがはじめて浮かび上がってくる。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
honyomuhito
68
フロイトは何かというとそれは性的なメタファーとか言い出すイメージだが本当にそうだったんすね。ラカンはフロイトへの回帰を主張した。仮説、検証、結論が地道に繰り返し語られフロイトからラカンへの過程が丁寧に述べられているのだと思う。が、いかんせん基礎知識がない、歴史的背景を知らないので途中で飽きた。結局何もわかっていないことがわかった。読了しても多分わからないなと途中リタイア。最後まで読んだ人、良かったらかいつまんで教えてください。https://chirakattahondana.com/人はみな妄想する/2019/12/18
シッダ@涅槃
37
★★★★。労作である。読んだきっかけは千葉雅也『メイキング・オブ・勉強の哲学』で「ラカンの入門書編にオススメ」とあったから。タイトルも柔らかい言葉だし(「妄想」と言う言葉はすっかり希釈され定着している)、入りやすそうと読むものは裏切られるであろう。なにせテーマは「神経症/精神病の鑑別診断」なのだ。もしかすると立ち読みしていたら手に取らなかった本かもしれない。ともかく読めて良かったです。2018/06/02
34
24
この本のテーマはラカンにおける神経症と精神病の鑑別診断である。一見して特殊なテーマ選択にも見えるが、日本語で読めるラカンの解説書として、実はこれ以上ないほどスタンダードな内容となっている。テーマ選択の妙と言えるかもしれない。とくにほとんどのセミネールが翻訳されていて、日本でも比較的なじみのある60年代までの思想を扱った前半部分がすばらしい。ラカンを真面目に読んでみたいひとは、まずこの本を手にとって、それからセミネールを最初から順に、もしくはどれか一つを選んで読む、という入門の道筋がともかくはできた。2017/09/13
Bartleby
15
メモ① 「享楽がシニフィアンのシステムという法によって禁止されている、という事実は、「〈物〉への到達を禁止している法を侵犯transgressionしさえすれば〈物〉へと到達しうるのではないか」というさらなるファンタズムを掻き立ててやまない」p274. 60年代ラカン cf) カントの「物自体」、バタイユ『エロティシズム』(1957)2022/12/26
またの名
15
もちろん下ネタ的意味ではない。次々と概念を更新させ体系に収まらないセリー状に展開していったラカン思想の理論的変遷を明快に整理し、単数形の父の名がもはや確固たる正常を保証することも請け合えなくなった「みんな精神病=妄想する」時代の果てに、固有の享楽のモードを意味するサントームに辿り着いた精神分析の軌跡を恐ろしく理解可能な形で記述。数々のわけワカランシェーマをすっきり説明し、ドゥルーズとガタリ、デリダと共鳴しつつも終わりある分析にこだわるラカンに従う本書は、DSM全盛の現代に神経症/精神病の鑑別問題で応答。2015/06/17