内容説明
他者とのコミュニケーションの失敗や断絶が残す傷は、ときとして新たな生へと動き出すための起点にもなる。看護、リハビリテーション、介護、心理療法などの世界を通して、思いもかけない仕方で変化していく人間の姿を描き出す哲学の新境地。
目次
第1部 ケア―傷と行為主体(看護行為の時間―ハイデガー行為論の拡張;心に残る「引っかかり」―コミュニケーションの失敗と行為主体の形成;リハビリテーションと二人で作る主体―視線触発と空想身体;介護の行為論―チームとしての行為主体と享楽;秘密と話し合い―予後の告知をめぐる看護師へのインタビュー)
第2部 精神医学―傷と身体(秘密とその未来―コミュニケーションのねじれとその後遺症;傷と引っかかりの身体論―よしもとばななとフォーカシング;傷のメタファー―心的外傷と職業選択;自分の名前―行動様式のもう一つの基点)
著者等紹介
村上靖彦[ムラカミヤスヒコ]
1970年生まれ。基礎精神病理学・精神分析学博士(パリ第7大学)。現在、大阪大学大学院人間科学研究科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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寛生
37
【図書館】「こりゃ、ただ事ではすまない本だな。凄いな。」というのが正直な読了後の〈感覚〉。「こんな〈書き方〉はどうしたら可能なのか」と思いきや、やはりパリで留学されていたと。羨望の眼差しをもって、この本を賞賛します。〈私〉の中には何も準備をしたり歓待する心の用意もなかったが、この〈本〉が気づいたら〈私の家〉の中にいて、共に食事をし極上のフランスワインを飲み干し、それで、「一体、なにがあったのか覚えていない」というような〈感覚〉を持つ。「ハイデガーの〈死〉のからここまできたのか」と〈思わされた〉。2014/01/23