内容説明
即興=インプロヴィゼーションを根源から定義し直し、最先端のパフォーミング・アーツの核心を明らかにする、究極の即興原論。
目次
第1部 即興の解体(問いのはじまり、或いはフリー・インプロヴィゼーションとは何か?;アクティヴ/パッシヴ・フィードバック;裏切りの記憶;「即興」の最大の敵;健忘症者のインプロヴィゼーション ほか)
第2部 即興の懐胎(チェルフィッチュは一体何をしているのか?;反復と差異と反復と差異と反復;幸福の(演劇の)残酷な条件
何が聴こえているのか?/誰を演じているのか?誰が(物)語っているのか?
ナレーターズ ほか)
著者等紹介
佐々木敦[ササキアツシ]
1964年生まれ。批評家。HEADZ主宰。雑誌「エクス・ポ」「ヒアホン」編集発行人。早稲田大学、武蔵野美術大学非常勤講師。映画・音楽から、文学・演劇・ダンス・思想など多彩な領域で批評活動を展開(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しゅん
14
デレク・ベイリーに端を発しジョン・ゾーン、大友良英へ引き継がれゆく即興音楽の試み。平田オリザ、岡田利規が切り開いた現代口語演劇の試み。二つの実践を繋ぐ「差異と反復」の問題を軸に、前半の「解体」では敢えて愚直に即興の論理を突き詰め、後半の「懐胎」では即興的な書き方で演劇の原理を探求する。独特な形式を持つ論の根本にあるのは「人は何故驚くのか」という哲学的設問であり、それが後の『未知との遭遇』へと発展する。極めて論理的に劇を構築する平田のリアリズムの真髄が本人しかわからない感覚的なものであるという指摘が面白い。2017/05/02
メルセ・ひすい
3
15-37 裏切りの記憶 「即興」の最大の敵 健忘症者のインプロヴィゼーションとは…音響的即興とは? 「聴取」 即興=インプロヴィゼーションを根源から定義し直し、最先端のパフォーミング・アーツの核心を明らかにする、即興の懐胎 チェルフィチは一体何をしているのか? …ナレーターズ ★演劇とダンスが、ほとんど同じものだと考えられる理由について「現代口語演劇」とは? 「ロボット演劇」とは何か 究極の即興原論。雑誌「ユリイカ」連載「「即興」の解体」及び「「即興」の懐胎」を書籍化。2011/07/17
バーニング
2
第一部では音楽を解体し、第二部では演劇を懐胎するという試みは同じ年(2011年)の暮れに出た『未知との遭遇』に確実に通底する。というのはあとがきで書いていることではあるが、こうしたことを実感し始めた第二部の半ばあたりで、読み終えたいま改めて第一部に立ち返りたいと思っている。複雑な議論をしている箇所もあるが総じて読みやすく、岡田利規や平田オリザの演劇をいますぐにでも見たくなる。2013/11/25
tegege
2
即興をインプロと演劇の二面で語った刺激的な評論。小難しい言葉や表現は読みづらいが、時間軸やコミュニケーション論に着目した論旨は、素晴らしく面白い。即興への興味がぐいぐいわく一冊。2011/05/10
catquittyquitty
1
音楽/演劇の軸をまたいで展開される即興の不/可能性について。いわく即興的に展開された後半部よりも、ベイリー/ゾーン/大友という微妙に異なる視座を持った音楽家それぞれの哲学に添いつつ、独特のアナロジーを配し論理が繋がれていく前半の方がやや纏まっていない感があり。即興的に紡がれ結論へと至った後半のロジックを前半にフィードバックするのは野暮かもしれないが、演奏行為に伴う身体性/もの性や聴き手たる著者の体験には少し言及が足りない感。ゾーンや大友への多角的な言及は後半部に回収されない様々な視座を含むような気がする。2018/12/04