内容説明
ドイツ語学者の人と仕事を語ってドイツ語を使わず、ドイツ文の文例を借りず、言語学の用語を用いず、生涯をたどるかたわら、そこに色濃い「ことばの哲学」を追求する。
目次
大尉の息子
陸軍幼年学校生
軍人失格
言語演技
文例集の周辺
幕合喜劇
教程の行方
文化村の日々
妻篭にて
文法の本
狼暮らし
死の前後
著者等紹介
池内紀[イケウチオサム]
1940年、兵庫県姫路市生まれ。ドイツ文学者、エッセイスト。主な著訳書に、『海山のあいだ』(講談社エッセイ賞)、『ゲーテさん、こんばんは』(桑原武夫学芸賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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柳田
13
これも随分前にみた。『関口初等ドイツ語講座』というのを國分功一郎がどこかですすめていて、ドイツ系をやると決めてもいなかった去年の春、編入の受験が終わったころに三巻まとめて購入した。ようやく最近まともに取り組み始めたのだが、たしかに楽しく優れた語学書だと思う。本当に初等文法と語彙を徹底するのが大切だなあと… で、この伝記はさほど面白くはなかった。字も大きめなのでさくさく読めたけれど。面白いエピソードはいくらでもありそうなので、もっと浩瀚な伝記もあったらいいなと思った。2018/07/24
isao_key
10
語学の天才、ドイツ語の鬼才と称され、関口文法といわれるほどの語学力を持った関口存男の評伝。本書を知る以前には、この人物について全く知らなかったが、職人気質で、求道者のような関口には、学者というより語学屋といったほうがしっくりくる。著者の池内先生は学生時代『冠詞』3巻に出会い、中身の詰まったトランクのように重く、不愛想な書物で読み手を選別していると評した。三上章にも通じるような頑固肌の天才。学習法も一貫して原書を辞書を引きながら、同じ箇所を何度でも読み返す。数百頁読み進めると次第に話の筋が通ってくるという。2017/01/12
mochi
9
語学の天才とか鬼才と言われたドイツ語学者関口存男(つぎお)の生涯。父が軍人だったため陸軍士官学校を卒業したが、10代で語学に打ち込み始めた。初級文法を固めた後に、いきなりドイツ語版『罪と罰』を購入、2年かけて読み、何度も繰り返し読むことで突然意味が分かるようになったという。留学経験も0で語学講師として活躍。同様の学習方法で仏語や英語、ロシア語、中国語、ラテン語、ギリシャ語なども身につけた。語学オタクの私は本格的な文法の学習に入る前に挫折してしまうことが多いが、この人は本当に努力家。勇気をもらえた。2021/08/08
takao
4
p.83 (関口の文例の分類方法について)こういった分類の成立経過を数字であらわすと、ウィトゲンシュタインが『論理哲学論考』にほどこした整理法と、奇妙なほど一致する。1,2,3と分けていって、1から派生したものは1・1とする。そこから思考がすすんだものは1・11、枝分かれした場合は1・12,枝分かれを発展させれば1・121といったぐあいだ。とすると、ほぼ同じころに地球の両側で、日夜、奇妙なファイルの出し入れがつづけられたことになる。☆ルーマンのメモシステムに同じ p.90 関口在男 独逸語文法 2022/08/31
koala-n
3
語学の鬼才、関口存男(つぎお)の評伝。ドイツ語学の世界では有名な人らしいが、この本を読むまで知らなかった。天才+超人的な努力で突き進む語学道は凄まじいの一言。読んでいるだけで、自分ももう一度なにか語学をやってみようかと思わせるものがある。偏屈さが不思議とチャーミングな印象を与えるのは、著者の筆の冴えによるものだけではないだろう。ただ、何度か説明がされている「意味形態論」なるものが最後までどうもよく理解できなかったのは私の頭のせいだけだろうか? ウィトゲンシュタインとの対比もあくまでも表面的なものに感じた。2013/12/25