内容説明
ドーキンスらの科学万能主義が蔓延する現代にあって、宗教はやはり阿片にすぎないのか。後期資本主義の格差・貧困を打開する可能性は、革命と救済を目指す宗教にあるのではないか。知の巨人・イーグルトンによる画期的宗教論。
目次
第1章 地の屑
第2章 裏切られた革命
第3章 信仰と理性
第4章 文化と野蛮
著者等紹介
イーグルトン,テリー[イーグルトン,テリー][Eagleton,Terry]
1943‐。現代イギリスを代表するマルクス主義批評家、文化理論家のひとり。ケンブリッジ大学卒業後、オックスフォード大学特別研究員、同大学教授。その後マンチェスター大学教授(2008年退官)。現在、ランカスター大学教授
大橋洋一[オオハシヨウイチ]
1953‐。東京大学大学院人文社会系研究科教授。専門は英文学、批評理論
小林久美子[コバヤシクミコ]
1978‐。ミシガン大学アナーバー校博士候補生、日本学術振興会特別研究員(PD)。東京大学大学院人文社会系博士課程満期退学。専門は米文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tyfk
6
マルクス主義批評家だし、キリスト教(解放の神学の系統)とマルクス主義を政治の面から連続的にとらえるのは当然かなと。それが失墜して、キリスト教原理主義とイスラム主義(とテロ)が台頭する〈政治的〉背景とかも、後半では説かれている。前半はドーキンス『神は妄想である』とヒッチンス『神は偉大ならず』(二人あわせてディチキンス)への批判が宗教と科学の関係を通して展開される。語り口はおもしろいけど、とくに斬新なことを言ってるわけではないかなあと。これを読んでトマスアクィナスに興味をもった。2024/04/13
彬
3
著者の人物像がいまいち掴めずに序盤を読み進めたので辛かった。現実主義・無神論的世界観の代表としてディチキンスを批判しながら宗教の可能性を説く。世界には複数の見方があり、それだけ可能性がある。さて問題は「一般的な」キリスト教徒が著者のように考えられるのだろうか、それほど深く明晰に思考するのだろうか。しかし著者が示す世界は面白い。無味乾燥ではなく救い・希望としての宗教、平和への希求、資本主義への警告と宗教者としての役割をよく自覚している。科学から批判されがちな宗教、二つの融和の可能性を示して終わる。2014/11/03
ちーけん
3
「神などは妄想である」という合理主義に立つ「リベラリスト」たちの宗教批判に応える書。宗教に興味はあるが、無神論からも離れられない私のような“現代人”に信仰の道を示してくれるかと思い読んでみた。本書は明快な答えを与えてはくれない。ソ連崩壊を目の当たりにし、資本主義こそが正しい道と信じた私は、著者と同じくその結果として世界に広がった荒漠たる風景に呆然としているクチだが、宗教を批判して現代世界を主導した「リベラル思想」の有責性を著者は指摘するとともに、革命思想としての宗教が現状を打破する可能性を説いてくれる。2010/09/17
微
1
めちゃめちゃ面白かったです。深い知見から切り出される現実は鮮やかで、「信仰する」という行為にはいかなる意味があるのかを教えて頂きました。図書館から借りて読みましたが、購入したくなる一冊でした。2011/10/28
ま
1
2011年度深沢ゼミのテキストとして。そこそこ面白い。でもところどころ何言っているかわからない。ディチキンス批判が痛快。イーグルトン、科学も批判しつつポストモダンも批判してる、面白いね。宗教と科学っていわゆる二項対立的に考えられがちだけど、実はそうじゃない。解放の神学。2011/07/21