内容説明
純文学、ミステリ、SF、現代詩…ジャンルを超えて何かが動き出そうとしている!?『ニッポンの思想』の著者が、ゼロ年代から新たなテン年代を見すえて爆読する、文芸批評の新境地。
目次
はじめに―「文学拡張マニュアル」のマニュアル
1 絶対安全文芸時評(二〇〇八年一月(各文芸誌新年号雑感;「川でうたう子ども」鹿島田真希 ほか)
二〇〇八年二月~三月(川上未映子が芥川賞を受賞;「あなたたちの恋愛は瀕死」川上未映子/金原ひとみ紹介 ほか) ほか)
2 ジャンル小説の変質と解体(センス・オブ・ワンダーの最先端(『Boy’s Surface』円城塔+『ダンシング・ヴァニティ』筒井康隆)
SFへの来訪(『天体の回転について』小林泰三+『新世界より』貫志祐介) ほか)
3 「私」と「世界」と「時空間」―インターポエティックス「私」のアクチュアルな解体をめぐって(「私」のアクチュアリティー;わたくし率・一人称・無 ほか)
著者等紹介
佐々木敦[ササキアツシ]
1964年生まれ。批評家。HEADZ主宰。雑誌「エクス・ポ」「ヒアホン」編集発行人。私塾的カルチャースクールBRAINZをオーガナイズ。映画・音楽から、文学・演劇・ダンス・思想など多彩な領域で批評活動を展開(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しゅん
13
文芸時評、ジャンル小説、詩論というおおまかな三部構成の中に多和田葉子、飛浩隆、伊藤計劃のインタビューを挟んだり締めが保坂和志との対談だったりと変則的な構成の一冊。タイトル通りのブックガイドとしても十分に通用するが、「私」と「時間」をどれだけ自由に捉えられるか、強固な自意識や一方通行な時間性の呪縛から解かれるための感性・知性をどう磨いていくかというテーマが底流していて、前述した構成もそのことと関連しているだろう。永遠に続くような問いだが、藝術はそもそもそういう問いかけを続けてきたもののような気がする。2017/06/25
おーしつ
8
文学は拡張を試みないと、すぐに圧縮してしまうのでしょうか。もしくは拡張ではなく拡散ならしちゃいそうだけど。 保坂和志との対談は面白かった。あと巻末の作家ガイドは役に立ちそう。2010/11/13
袖崎いたる
5
表紙にもあるように?たぶん佐々木敦は(島尾敏雄?ー)小島信夫ー保坂和志ー磯崎憲一郎の系譜に肩入れをしている。保坂和志との対談おもろい。カフカの訳について熱く語っている。某文庫版のが価格高騰したのはこのあたりに原因があるのではないかと思うが、どうなんだろう。2022/12/03
三柴ゆよし
4
まさに「絶対安全」といった趣きの批評には好悪の判断がわかれるだろうが、第一線の文学事情にとことん疎い僕のような人間にとっては、救いのような一冊だった。現代日本文学のブックガイドとしては、目下のところ最良のものでしょう。もっとも、文学の「拡張」なんてことは、いうまでもなくみんなわかってることだと思うんだけど……。声を大にしたい気持ちもわからないではない。2010/04/10
梨
2
現代文学にすっかり疎くなっていたので良いリハビリになった。ジャンルの侵食や舞城古川らの先端的(?)な作家に好意的な書評には賛同しつつも一抹の胡散臭さを感じる(それはこの本の著者に限らず)。個人的にはこういうところですら取り上げられない北野勇作を不憫に思う。2010/07/19