出版社内容情報
「愛情があればものごとがうまくいくとか、うまくいかぬのは愛情の足りないゆえなどというのも反対で、ものごとの成否の効用に関係なく、発生してしまうのが愛情というものだ。・・・・・家を愛すとか、国を愛すとか、道徳にされるのはかなわん。」(本文より)
内容説明
軟弱ヒコクミンとして戦中、頼りない教授として戦後、アイデンティティが弱く不安定に適合して現在。それなりにぼちぼち楽しく生きている。
目次
作ったつもりの人生を捨て(ゆとりの修行;老後の安定より老後の自由 ほか)
旅にでも出ましょうか(アームチェア・トラヴェラー;人生の散歩 ほか)
正しいなんてたいしたことではない(理想の授業なんて考えない;信頼は依存じゃない ほか)
ぼくはいくじなしと、ここに宣言する(昭和の青春;いくじなし宣言 ほか)
著者等紹介
森毅[モリツヨシ]
1928年東京生まれ、大阪育ち。東京大学理学部数学科卒。京都大学名誉教授。数学者。専攻は、関数空間の解析の位相的研究。自由な発想による鋭い論評で、評論家・書評家としても幅広く活躍する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
魚京童!
21
共同体の文化にとけこもうとするのが協調性だが、異文化とつき合うのが社交性である。異性とか、異国人とか、異世代とか、自分の仲間でない相手とつき合う社交術は、得意なほうだ。2014/02/06
刺繍好きの糸ちゃん
8
単位はもらったが授業は1回も出なかった。試験は問題の意味も分からんレポート試験で、回ってきた解答を書き写し、それだけでは申し訳ないと勝手な作文を足して出したのを覚えてる。こんな博学のセンセイなら直に一度は話を聞きたかったなと思うが、18の小娘はイロイロ興味が分散していたのだろう。新聞記事に驚いたのは、晩年に自宅で料理中にガスの火を服につけて大火傷されたこと。一命はとりとめたものの、結局はそれがもとで亡くなられた。ひょうひょうと無駄を楽しんで、死んでるのか死んでへんのかわからん感じで旅立ってほしかったな。2020/07/24
時任ウロ
2
歳を取った人の言葉は心を軽くする。学校という場所にもっと自由を求めてもいいんじゃないかと思う。それを受け止めて管理することが出来ればもっと個性を伸ばせるんじゃないのか。みんな一緒にして枠にはめたがる日本教育はこれから変わっていって欲しい。2014/02/07
のせち
1
森毅氏の教科書は手に取ったことがあるが、エッセーは初めて読む。自分の思いを説く文章は、小気味良いリズムがあり読みやすい。旅の話、協調性と社交性の違い等が印象的だった。2022/01/06
ががが
1
京大大学教授のエッセイ。専門は数学らしいが、テーマは特に設けておらずつらつらと書き連ねている。社会に対する姿勢や教育論などを中心に扱っているが、基本的に内容は少ないので手軽に読んでいけるだろう。著者が定年を迎え、今までやってきたことをところどころ見返しているような視点が感じられ、これからリタイアする人にとっても有益な視点を与えてくれる。協調性と社交性の違い、安定と多様性の相関など、なぜ今まで分けて考えなかったのだろうということを整理して論じていくスタイルはさすが経歴に違わず、という感じがした。2017/05/21