内容説明
もう戦争は始まっている!それはチェーホフを読めばわかる。土地、女性、自殺、戦争…没後百年を経て、ますます生々しさをますチェーホフの4大戯曲を、気鋭の劇作家/演出家が精緻に読みとき、現代の“戦争”にそなえるための構えを模索する傑作評論。
目次
不動産業者の普遍性―『桜の園』(泣く喜劇;舞台空虚;遠い音)
女優の生き方―『かもめ』(「男」が作るコード;法に抗う者;悲惨、滑稽、解放)
四十七歳の憂鬱―『ワーニャ叔父さん』(「世界」が老いている;憂鬱の可能性;「からだ」が出現するとき;「まだ」と「もう」のあいだ)
軍楽隊の音が聞こえる―『三人姉妹』(戦争の劇;時間を表徴する女;遠景としての火事)
著者等紹介
宮沢章夫[ミヤザワアキオ]
1956年、静岡県生まれ。劇作家・演出家・作家。「遊園地再生事業団」主宰。92年『ヒネミ』で岸田國士戯曲賞受賞。2005年より早稲田大学文学部で教鞭をとる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あなた
1
ワーニャのだるい身体とロパーヒンの加速する身体という身体論が秀逸。たしかに規律訓練化したモダンな垂直する身体に、寺山のようなアングラでポストモダンなぐにゃぐにゃした身体を脱領域化するところにワーニャ・ロパーヒンの身体はある。でも。全体的に読みが浅く、不満足。劇作家が読むと、どうなるかが本書の眼目だからしかたないか2009/08/04
watershed
0
強引に読み込みしていくのが面白い。この本では政治が生に直接結び付いている。 「かもめ」では、連合赤軍、フェミニズム、自分探し、男女間のコミュニケーション不全と展開する。ドラマツルギーと女優の関係。戯曲の解説が社会の読解に繋がり、両者に共通する肉体を通じて演じられることが顕かになる。「ワーニャ叔父さん」では同い年の石破防衛庁長官から戦後政治へ。最後は来るべき戦争への不安、それは戦闘行為よりむしろ生活へ侵食してくる戦時体制である。2015/11/29