内容説明
DNAが98パーセント同じだからといって、人はチンパンジーなのか。人類学の立場から、分子遺伝学と遺伝子決定論を厳密に区分し、人種やIQを遺伝子で語る通俗遺伝観を根底から批判する。科学者の盲点をつき、“科学”と“文化”の新しい関係を提唱する、目からウロコの最先端科学論。
目次
分子人類学
あなたの中の類人猿
人間の違いかた
人間の多様さの意味
行動遺伝学
通俗遺伝観
人間の本性
類人猿にも人権?
人間遺伝子の博物館?
アイデンティティーと血統
血はほんとうにそれほど濃いのか
科学、宗教、世界観
著者等紹介
マークス,ジョナサン[マークス,ジョナサン][Marks,Jonathan]
ノース・カロライナ大学準教授(人類学)。『98%チンパンジー―分子人類学から見た現代遺伝学』で2003年W.W.ハウエルズ図書賞を受賞
長野敬[ナガノケイ]
生物学者。著書に『変容する生物学』『進化論のらせん階段』(いずれも青土社)など
赤松真紀[アカマツマキ]
D.W.ウォルフ『地中生命の驚異』、W.アゴスタ『虫たちの化学戦略』(いずれも青土社)など自然科学系の翻訳多数
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y田
8
【それは科学なのかそれとも"科学主義"なのか?】人間とチンパンジーの遺伝子の配列は98%同じだという。この「事実」から導かれる事って何だろう。人間はチンパンジーの一種に過ぎない?チンパンジーは殆ど人間だから「人権」を持つ筈だ? ◉筆者は科学者達が主張する事は「科学的事実」とは別にその人の知的背景、政治的立場、イデオロギーが影響するとして、その元となる考え方を分類主義、人種主義、遺伝主義、本質主義と捉え批判する。確かに「遺伝子」とか言われればそれらしく感じるのも正直な所。物事を見通すヒントを貰えたと思う。2020/05/05
いきもの
4
人間とチンパンジーが遺伝子的に見て98%同じだからといって人間の「自然の本質」が(少なくとも現在のデータだけでは)チンパンジーにあるわけではないこと、チンパンジーが人権を持つべきという議論の陳腐さなどなど。遺伝子的なデータを取り扱う場合のその比較時の恣意性(アルゴリズムに依る差異)。民族的な差異を調べるときのデータ抽出の誤り(人種の区分は社会的な固定観念に左右されやすい。本来は連続的)。著者はやや相対主義に偏りそうな気もしなくもないが昨今の遺伝子・ゲノムへの万能的な期待感に警鐘を鳴らしていて興味深い。2015/05/03
宙庭隼人
2
「人間に近いチンパンジーに、人間の言葉を教える」話をいくつか読んで、具体的にどれくらいチンパンジーが人間に似てるのかを知りたくなり読んでみました。その話に直接関わっているのは、ほんの一部ですが、興味深い話ばかりでした。遺伝子学者がしてきた失敗は、どの分野にもあることだと思います。科学は人の幸せのためにないと、という言葉は、ほんとうにその通り。2015/04/19
cqe06236
1
「遺伝子から見ると人間とチンパンジーはほぼ同じだが明確に異なる」ことから派生して、「人間の人種も遺伝的に異なる」如く論じるような人類学者を批判しながらも、それに至らないような科学教育の重要性を説いている。人種は文化的に異なるだけだが、遺伝的に異なる如く政治において論じられる危険性とそうならないための科学の責任を論じることがこの本の主題。2012/06/17
takao
0
うーん。2016/09/27