内容説明
人間は起源を忘れて彷徨する影だ―。忘れられた歴史への洞察と物語の断片を結晶化させ、世界への祈りへと到達する、畏怖すべき思考の軌跡。仏読書界に衝撃を与えたゴンクール賞受賞作品。
著者等紹介
キニャール,パスカル[キニャール,パスカル][Quignard,Pascal]
1948年、フランスのノルマンディー生まれ。現代フランス文学を代表する作家。母方は代々ソルボンヌの教授をつとめた文法学者の家系、父方はアルザス地方の職人オルガニストの家系。二十一歳でガリマール社の原稿審査委員に就任。作家活動を続けながら、ガリマール社の代表顧問、様々な文学賞の審査員、ヴェルサイユの古楽フェスティヴァル代表などをつとめるが、1994年、すべての公職をなげうち、家族とも離れ、以来、読書と執筆に没頭する。小説とも随想ともつかぬ、物語と思弁を綯い交ぜにした、特異な情熱の閃く作品を次々と生み出している。『さまよえる影』は「最後の王国」と題された3冊のシリーズの第1巻目で、2002年の第99回ゴンクール賞を受賞した
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感想・レビュー
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多聞
15
「影」にまつわる断章。ランダムに配置された博覧強記の数々の内部に、多様な形をした無数の影が潜む。おそらく、私たちが歩んできた歴史と共にあり、現在もすぐそばに在る影の本質を理解することなくして陰翳を礼讃するのは愚かなのかもしれない。影ハ何処ニアリヤ? の問いに向かい合わなければならない。2013/03/12
いやしの本棚
9
クープラン「さまよえる影」を聴きつつ読了。といっても、著者の教養が広く深すぎて、まったく咀嚼できていない。ほんとうに短い一章もあれば、「ソフィイウスの最期」のような物語もある。惹かれるけれど、まだまだこの文章の魅力を汲み尽せていないので、何度でも読み返さないといけないし、それが楽しみでもある。2016/02/14
吟遊
8
物憂いバタイユ2018/12/24
manifestus_
4
薄っぺらい自然志向なるものを標榜した記事で陰翳礼讃がもてはやされるが、キニャールの断章「影」を刮目してほしい。谷崎潤一郎の美的立場は、終生断固として反自然主義者だった。2012/10/13
ひろゆき
3
小説でもなく詩でもなく、随想でもなく。これは読了困難かもと思ったが、なんとか。切れ切れの断章だが、それなりの連続性があり、意味不明の箇所もあるのだが、追うことができた。魅力ある文章のおかげもあるかな。谷崎潤一郎など様々な作家思想家に触れていて、博学にいたく感心。2017/07/07