内容説明
日本の満洲侵略に遭った母をもち、韓国軍政を逃れアメリカへ。パリ留学を経てニューヨークで暴漢に殺される―植民地以後、母国語を奪われた女性が、複数の言語と図像を往還し、自らの生と現代世界史を一冊に凝縮した究極の実験的テクスト。アメリカにおけるポストコロニアル、多文化主義、ジェンダー研究の必読書。
著者等紹介
チャ,テレサ・ハッキョン[チャ,テレサハッキョン][Cha,Theresa Hak Kyung]
1951年プサン生まれ。韓国軍政を逃れて62年ハワイに移民。64年からサンフランシスコ在住。カリフォルニア大学バークレー校でフランス文学、比較文学、芸術学などを学ぶ。76年パリ留学。77年合衆国に帰化。79年と81年に韓国へ帰国旅行。80年ニューヨーク転居。82年、暴漢に殺される。アメリカにおけるアジア系女性を代表するアーティストとして、彫刻、布や紙の作品、映画、ヴィデオ、写真、パフォーマンス、詩などを多数遺した
池内靖子[イケウチヤスコ]
立命館大学産業社会学部教授。専攻は演劇論
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感想・レビュー
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gorgeanalogue
4
古書値が高いので、図書館本。理解できたとはとても言えないが、政治的な含意が強い前半から、井戸を降りていくように複数の声と歴史、そして言葉と「遮蔽」(それはそれ自身を可能にする)をテーマとするような後半への移ろう様子が印象に残った。訳注に由来不明と書いてある手形は洞窟の「ネガティブハンド」なんではないか。組版には強い違和感が残る(特に斜体)。2021/01/16
misman
2
予想していたよりも、言語実験的な本。英語、フランス語、韓国語を理解できれば原文のまま、この言語の混乱を理解できるのかなと思った。伝記部分とドローイングのような写真、詩のような部分すべてが緻密で面白い。2016/05/30