内容説明
1931年、パリ。植民地博覧会=人間動物園に送り込まれて見世物になったニューカレドニアの人々をさらなる苦難が待ち受ける…。フランス“帝国”が無垢な楽園の人々に与えた癒されぬ傷を語り継ぐ、暗い輝きを放つ物語の傑作。
著者等紹介
デナンクス,ディディエ[デナンクス,ディディエ][Daeninckx,Didier]
1950年、パリ郊外サン=ドニ生まれ。高校卒業後、印刷工として働くが、不景気で失職。失業手当を受けながら、習作を書き綴る。1984年、ガリマール社のセリ・ノワール叢書の一冊として刊行された『記憶のための殺人』でフランス推理小説大賞、ポール・ヴァイヤン・クーチュリエ賞を受賞。また『未完の巨人人形』で813協会ロマン・ノワール大賞を、87年に『プレイバック』でミステリー批評家大賞を受賞。歴史意識に裏打ちされ、現代社会に生きる者の感受性の基盤を問い直す力を秘めた作品を三十作あまり発表。フランスでもっとも注目されている作家のひとり
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感想・レビュー
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shizuka_電気うさぎ
9
本当に「食べる」話ではない。パリの植民地博覧会展示のためにニューカレドニアから騙されて連れてこられたゴセネが主人公。さらにドイツに送られた許嫁を含む仲間達を奪還すべく友人と二人で慣れぬ大都市パリの夜を駆け回る。独自の文化、教養と誇りを持った人々を未開人種として晒し者にするグロテスクさとゴセネを助けてくれる人たちの真っ当さはどちらも誰もが内に持つものではないだろうか。ワニとカナックの人々を交換する話は実話だそうだ。続編があるらしい。ぜひ翻訳してもらいたい。2015/11/23
凛
7
1931年パリ人間動物園にまつわる実話ベースの物語。カナック人の中では今もなお語り継がれている話なのだろう。ニューカレドニアから大都会パリへ輸送された主人公が、連れ去られた許嫁を探しに街中を不安と緊張一杯に疾走する姿が生き生きと脳裏に再生される。1931年なんてほんのこの前なのに酷いな!とは思いつつ日本でも男女雇用機会均等法は1986年施行だし、差別意識の是非なんて未だ黎明期なんでしょうかね。2013/07/29
ナツ
2
本当の食人種の話ではなく、フランス人によって食親族に仕立てられ見世物にされたニューカレドニア人達の実話を元にしたお話。 訳のせいか情景が浮かびにくかったのが残念2021/07/06
dilettante_k
2
原著98年。1931年のフランス・パリ植民地博覧会。ニューカレドニアから半ば拉致されてきたゴセネらカナックの人びとを待ち受けていたのは、未開のカニバル(食人種)として動物とともに観衆にさらされる「人間の展示」だった。屈辱的な冷遇と、ワニと引き換えにドイツの見世物に送るという理由で婚約者を引きはがされたゴセネたちは怒りを爆発させ、彼女を奪還すべく脱走し、植民地博の熱狂に沸くパリの街を疾走する。帝国主義と民族学の暴走として悪名高い人間の展示が植民地の人びとの尊厳に残した爪跡を、実話に則して告発する中編小説。2015/04/06
runorio
0
年老いた主人公が、パリにおける若き日の出来事を語って聞かせる形式で進行してゆく、実話を基にした物語。20世紀初頭のパリの情景が自然と頭に浮かんでくるようなイメージ豊かな中篇。カナックの人々が受けた恥辱はこうしていつまでも語り継がれるべきだろう。しかし博覧会てこんな昔からやってたんですね。2011/02/10