内容説明
人間はいつも人間の意識世界を読み解いて生きている。われわれが社会生活を営み得るのはそのためである。世界が心を構成するのではなく、心が人間の世界を構成する。自閉症が生じるのはマインド・リーディングの障害によってである。認知科学の最新の成果の上にマインド・リーディングの進化モデルを提唱し、心理学の新しい扉を開いた注目の書。
目次
第1章 心が見えないことと、心を読むこと
第2章 進化論的心理学と社会的チエス
第3章 心を読むこと―自然の選択
第4章 心を読むことの発達―四つの段階
第5章 自閉症とマインド・ブラインドネス
第6章 脳はどのようにして心を読むのか
第7章 目の言語
第8章 心を読むこと―未来への帰還
著者等紹介
バロン=コーエン,サイモン[バロンコーエン,サイモン][Baron‐Cohen,Simon]
ケンブリッジ大学実験心理学・精神医学部精神病理学講師
長野敬[ナガノケイ]
1929年生まれ。東京大学理学部卒業。現在、河合文化教育研究所主任研究員。生物学、生命論専攻
長畑正道[ナガハタマサミチ]
1928年生まれ。東京大学医学部卒業。現在、東京聖徳大学教授。小児精神神経学専攻
今野義孝[コンノヨシタカ]
1948年生まれ。東京教育大学大学院博士課程中退。現在、文教大学教授。心理学専攻
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toshi53162606
5
自閉症研究の第一人者である著者の名著。 進化論的なアプローチから自閉症について研究し、自閉症の原因を〈心の理論〉の障害であると結論付けている。 メモしながら読んでいたうえ、科学者らしく明確な筆致や具体的な研究結果の報告が羅列されているのでわかりやすく、併読していた難解なデネットの本への理解にも繋がった。 また、ASDを抱えている自分にとっては当事者研究にもなり、なおかつ普段から進化論的なアプローチに強い関心を抱いているので、とても学びの多い読書となった。2022/03/22
カナトキ
3
バロン・コーエンが考える心を読むシステムの構造と進化や発達的な意味、それらが損なわれた状態としての自閉症についての分析が読んでいて面白かったです。特に視線の検出から三項表象への結びつきの重要性は、子どものコミュニケーションを考える際にとても参考にしたいポイントでした。2016/05/08
ふわねこ
2
自閉症スペクトラム障害の原因は心の理論の欠如である、という主張をした本。心の理論とは他者の心を推測する人間の機能のことである。著者の主張する心の理論は、視線の検知、共同注意を基礎として心の理論ができてくる。特に大事なのが共同注意で、この機能が欠落していると自閉症になりやすい、と主張される。ただ、私としてはこの手の抽象的なモデルを好まない。著者の進化心理学に寄り添う態度にも疑問がある。でも、自閉症理解に資する本だとは思う。想定読者は心理学の研究者で少し難しいが。2023/08/27
symbioticworm
1
「自閉症」とタイトルについてはいるが、「心の理論」を中心とした認知心理学的な内容が主体であり、療育方面の話題は少ない。その点を踏まえれば、人間の認知心理理解に関して、視線の検出を特徴とした興味深い仮説モデルを提供していて、読み応えのある内容になっている。一部の人名で、日本で通常使われているもの(コスミデス、スペルベル、ドゥ・ヴァール等)と異なる表記がされているため、参考文献を探す際には注意。2016/05/30
homuragitsune
1
心を読むという人間の能力を4つのステージに分け、自閉症児がどの部分で障害されているのか解説した本。自閉症はどことなくつかみにくい疾患だと思っていたが、少しは理解を前進させられたと思う。2012/01/01