内容説明
これまでの生と向き合い、これからの生を選び取る。告知、療養環境の選択、何かを遺すこと―在宅緩和ケアを受け、自宅で最期を迎えたがん患者たちの語りから、「日常」と地続きにある「死にゆく過程の生」を描き出す。
目次
序章 現代社会においてなぜ死が問題になるのか
第1章 「良い死」の実現―ホスピス・緩和ケアの可能性と困難
第2章 未決の問いとしてのがん告知
第3章 治療を「あきらめる」経験の語り―死にゆく過程における自己の多元性
第4章 受け継がれていく生―死にゆく者と看取る者との関係の継続
第5章 死者との邂逅―終末期体験としての「お迎え」
終章 死にゆく過程をどう生きるか
補論1 地域社会におけるホスピス運動の形成と展開
補論2 ホスピスボランティアの意義と可能性
著者等紹介
田代志門[タシロシモン]
1976年山形県生まれ。2000年東北大学文学部卒業。2007年東北大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。現在、国立がん研究センター社会と健康研究センター生命倫理研究室室長。専門、社会学・生命倫理学。著書『研究倫理とは何か―臨床医学研究と生命倫理』(勁草書房、第9回日本医学哲学・倫理学会学会賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たろーたん
3
「プロセスとしての死」ってのが興味深かった。死に目に遭えないというような死ぬ瞬間主義が日本にはあるが、緩和ケアの専門家によれば死にゆく過程にじっくりと向き合った家族は、最後の瞬間にそこまで固執しないみたい。死ぬ瞬間への過剰なこだわりは死が病院化され、死にゆくプロセスが充分に共有しにくくなった時代こその現象かもしれない。また、「病院死」から「死にゆく過程」の変化も面白かった。「病院死」は本人が事実を伏せられ、家族と医師で治癒して社会復帰するというシナリオでストーリーが進展していき、(続)2022/03/04
Schuhschnabel
3
終末期がん患者のケアについて、臨床から一歩引いた社会学の立場から述べられている。ホスピス病棟においては患者から死にゆく者以外の役割を奪ってしまう可能性があるという問題提起から始まり、病名と予後の告知の仕方、患者の人生の語りの複線性、死にゆく者から残されるものへと受け継がれる意思、死にゆく者と死者との「お迎え」という体験を依り代とした関係、そしてケアする側の思想や素人のボランティアの役割について考察がなされている。2017/02/11