内容説明
精神障害者が人間らしく生きるために―京都洛北・岩倉の実践。精神障害者を閉じ込めず、一般民家で預かって、共に暮らしていた洛北岩倉。本書は、その歴史を著者長年にわたる聞き取りと地元に残る史料により解明し、地域で精神障害者を看護していくためのヒントを得ようとする試みである。
目次
岩倉の大雲寺と精神病とのかかわり始め
後水尾上皇と岩倉
大雲寺十一面観世音菩薩の開帳と参篭人の定着
大雲寺参篭人の病気の種類
参篭人の受け入れ体制―実相院・大雲寺・法師・茶屋
参篭人受け入れの拡大と「強力」
後三条天皇第三皇女に関する伝承をめぐって
京都癲狂院の設立と岩倉における精神病患者預かりの禁止
京都癲狂院設立をめぐる不自然さ
岩倉と久世における精神病患者処遇批判の不自然さ〔ほか〕
著者等紹介
中村治[ナカムラオサム]
1955年京都市左京区岩倉に生まれる。1977年京都大学文学部卒業。1983年京都大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。2007年京都大学人間・環境学博士。現在、大阪府立大学人間社会学部教授。専門は環境思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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gtn
10
京都岩倉は歴史的にも精神患者に優しい土地であった。かつて存在した保養所。朝はラジオ体操をし、日中は宝ヶ池等に散歩に出かけ、薪割や風呂沸かしの作業を行う。その当時、昭和10年代の写真だが、患者たちの穏やかな表情に理想的な療法が施されていたことが見て取れる。2018/11/13
まめお~
4
現代地域精神医療で教訓とすべき書。昔、精神障害者を民家(及び保養所)で預かり共に暮らしていた洛北岩倉。家族的看護がなぜ可能だったか?一つに精神障害者に対する【地域住民の慣れ】が挙げられている。社会的入院→出てこない→人々が慣れない→益々出られない今の日本。大正時代の患者の家族「入院は『病院に入ってる』と周りに言われるが、保養所なら『保養に行っている』と言える」の言葉が印象的。長兄が結婚する頃、統合失調症次兄が留年浪人を経てなんとか大学に入った。嫁家族に「大学生」と言えたからよかったと言った母を思い出すw2015/08/28