内容説明
福祉国家の終焉、グローバリゼーション、個人化、リスク社会…“社会的なもの”のリアリティが急速に失われつつある現代社会において、社会調査のもつ意味を問い、いま求められる実践としての知のあり方を探る。
目次
“社会的なもの”の危機と社会調査
第1部 “社会的なもの”の変容と社会調査的な知(リスク社会と知の様式―不知と監視;保険と調査―もうひとつの社会調査史;高齢者介護の計測と身体管理―介護保険による身体へのまなざしの変容)
第2部 社会調査は何を行っているのか(薬害HIV感染被害問題調査のリフレクシヴな理解;曖昧さのない質問を行なうこと―相互行為のなかの情報収集;心は直観的統計学者か?―実験心理学における確率統計モデルの採用)
第3部 科学的(社会学的)知と権力をめぐって(冷戦下の社会科学と社会学―近代化論を中心に;科学的言説と権力―身体と権力の奇妙な関係と科学的言説)
死と社会調査―いま求められている実践としての知とは何か
著者等紹介
田中耕一[タナカコウイチ]
現職、関西学院大学社会学部教授。生年、1955年。専攻は社会学理論、現代社会論
荻野昌弘[オギノマサヒロ]
現職、関西学院大学社会学部教授。生年、1957年。専攻は社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mealla0v0
3
小幡正敏「保険と調査」。社会調査が対象とする「社会」とは、そもそも何か。この問いをめぐって、保険の来歴が語られる。統治術としての政治算術は、統計学=「国家の科学」を道具立てとするが、これには国家と個人という表象しか存在しない。が、ここに対して第三項として社会の表象が登場する。この領域を規範的に構成すると同時に実証的に把握することが社会調査であった。それは保険技術によって可能になる。事故や伝染病が個人的な過失ではなく、社会的リスクとなった。だが、福祉国家の崩壊とともに、保険はリスク細分化による排除の装置に。2021/02/28
Mealla0v0
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「社会調査と権力」という、いかにもフーコー的な論集。事実、いずれの論者においても社会調査は統治のためのテクノロジーとその知であるということが了解されていると言ってよい。だが、かくして把握される〈社会的なもの〉は今日危機にある。そしてまた、社会調査も危機に瀕しているというわけだ。そこで新たに立ち現れる「リスク社会」において、社会調査は新しい監視と資源配分のための知と化す。それは死や戦争のテクノロジーと紙一重の統治のテクノロジーを意味している。2017/07/11