内容説明
食肉センター建設反対運動から部落差別の調査は始まった。調査拒否に真摯に向き合いながら聞き取りを重ね、被差別の生活文化を掘り起こす。環境と差別の見えない絡まり合いをときほぐし、“構造的差別”を支える規範の正体に迫る“批判的ソシオグラフィ”の試み。
目次
序章 “見えないもの”を書く技法―批判的分析としてのソシオグラフィ
第1章 “対話”としての環境調査
第2章 屠場建設問題と環境表象の生成―環境の定義と規範化の力
第3章 構造的差別と環境の言説のあいだ
第4章 屠場にて―私のフィールドノートから
第5章 牛を丸ごと活かす文化とBSE
第6章 環境のヘゲモニーと構造的差別―大阪国際空港「不法占拠」問題の歴史にふれて
第7章 被差別部落で聞く
第8章 「よそ者」としての解放運動―湖北における朝野温知の運動の軌跡
第9章 被差別部落への手紙
著者等紹介
三浦耕吉郎[ミウラコウキチロウ]
東京大学大学院社会学研究科博士課程満期退学。関西学院大学社会学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小鈴
4
7章「被差別部落で聞く」のみ立ち読み。フィールドワーカーならば、調査論として押さえておきたい。調査する者はなぜ調査するのか常に問われる。非調査者の問に鈍感な調査者は、話を聞きながらも、何も見えていないときがあるのだ。序章〈見えないもの〉を書く技法も立ち読み。2009/09/05
ふにゃ
0
環境社会学への批判。生活環境主義が大切にする生活者のルールそのものにすでに(構造的な)差別が隠れていることが指摘されている。著者はそうしたルールから外れる人との〈対話〉を重視する。自分もインタビューをする身としては、筆者がインタビュー相手に「たくましく感じられる」と言って、相手からの反応が鈍かったことについての回想が印象的だった。差別についての議論は、ある特定の連結符社会学と結びつきがちなので、こうして、他の社会学(環境社会学)とも結びつけていくのは興味深いと思った。2013/05/23