出版社内容情報
フロイト精神分析が無意識「調整」心理学だとすれば、ユング心理学は無意識「熟成」心理学といってよいかもしれません。その人固有の《こころの闇》と対話することによって、万人の闇に媒介され変容が起こり《こころの病み》が生きやすくなる。このような醗酵・醸造型のモデルはこれからの「個別」と「全体」の並存が課題になる状況において注目されるのではないでしょうか。
心理療法という営みは、いわゆる「科学」という範疇には納まらない“個別性”や“超越性”を含んでくる。ただしそれは科学という普遍妥当性と無縁のものでもない。個別の心的事象のなかにはいつも普遍へと通ずるものが含まれているからである。また、治療者の態度によって現れてくる心的現象も大きな影響を受ける。とすれば治療者のもつ世界観のありかたが否応なく治療に反映される。そして個々の「世界観」は、時に集合性に影響をうけつつも相対的に独立していなくてはならない。・・・・・・私が本書のなかで、自分が何にこだわって日々の臨床を行っているかを、くどいほど論ずる所以である。(本文「まえがき」より)
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【関連書籍】
『 心理臨床の奥行き 』 河合隼雄ほか著 (定価1995円 2007.8月)
『 カウンセリング大事典 』 小林司 編 (定価9975円 2005)
『 精神病というこころ 』 松木邦弘著 (定価2520円 2000)
【新 刊】
『 心の問題への治療的アプローチ 』 スーザン・ケイヴ著 (定価2310円 2007.9月)
目次
病いと向き合う場―経験科学の可能性
第1部 臨床の場のダイナミズム(経験治療的スタンス―二者のあいだの距離;二者のあいだの出来事―生じることとしての転移/逆転移;転移から変容へ―個の境界を超えた地平 ほか)
第2部 生のストーリーの導き手(女性の変容と現代―個性化をめぐる桎梏と解放;魔の深層人間学―ひとの闇とこころの病み;神話を生きる―光と闇を映す心理療法)
第3部 深層のヒストリーの水脈(変容をうながす力との遭遇―“猿の婿どの”考;老いに向きあう生と聖―“姥捨山”考;魂の営みとしての異世界―“天降り乙女”考)
著者等紹介
横山博[ヨコヤマヒロシ]
1945年生まれ、京都大学医学部卒業。精神病院勤務の後、1984‐1985年・1988‐1989年、チューリッヒのユング研究所に留学し、ディプロマを取得。1995年より甲南大学文学部人間科学科教授。精神科医、臨床心理士、ユング派分析家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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