対話的自己―デカルト/ジェームズ/ミードを超えて

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  • サイズ A5判/ページ数 282p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784788510173
  • NDC分類 141.93
  • Cコード C3011

出版社内容情報

 さまざまな学問領域が近代以降、デカルト的な「対立・二軸」構図のもと発展してきました。心理学でもその流れは堅固で、長いあいだ、実験者/被験者・観察者/観察対象・治療者/患者という図式が研究の基礎となっていました。しかし他方で、理論物理学を筆頭として諸ジャンルで旧弊の超克が試みられてきたことも事実です。――本書ではそうした大きなパラダイム転換のうねりを継承して、心理学におけるポリフォニック(多声的)な「対話・多軸」構図を提唱します。この《対話的自己》論の射程は広く、臨床心理学・発達心理学・パーソナリティ心理学・社会心理学をはじめ、ナラティブ(物語的)心理学に至るまで、アカデミックな基盤の再構築と応用研究の新構成を確約します。

 『対話的自己』はハーマンスたちのそれまでの研究の集大成で、自己の心理学研究史の最先端に位置する成果の一つである。本書は上記論文と同じタイトルで、次の年に刊行されたものである。この本では論文の骨子がさらに豊富に肉づけられ、“対話”という概念が慎重に導入され磨き上げられている。対話は人の存在を決定するもっとも高次の能力である。そして自己はまた対話に類似していると著者たちはいう。たとえば臨床実践の場に引き寄せてみると、対話によっていかにして“新しい意味”が生まれ、自己の回復をえるかという研究と実践リアルにこの本で扱われる。問いと答えの対話的運動のなかでセラピーの面接場面をとらえて見直したくなる。そういう野心を読み手にも引き起こす挑戦的な本である。(「序 文」より)

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 【関連書籍】
 『 心理臨床の奥行き 』 河合隼雄ほか著 (定価1995円 2007)
 『 生によりそう「対話」』 土屋由美著 (定価2310円 2007)
 『 精神病というこころ 』 松木邦弘著 (定価2520円 2000)

 【新 刊】
 『 心の問題への治療的アプローチ 』 スーザン・ケイヴ著 (定価2310円 2007.9月)

目次

第1章 ヴィーコvsデカルト
第2章 現実についての物語構成
第3章 自己の分権化
第4章 近代小説文学における発展
第5章 対話的自己―支配性(ドミナンス)とやりとりとの緊張
第6章 自己のダイナミックスと総合
第7章 自己と社会―ミードの再検討
第8章 心理学における三つの分離―たもとを分かつかそれとも互いに豊かになるか
第9章 意味の構成と共同構成―バリュエーション心理学に向けての探求

著者等紹介

ハーマンス,ヒューバート・J.M.[ハーマンス,ヒューバートJ.M.][Hermans,Hubert J.M.]
1937年オランダ南部のマーストリヒトで生まれる。オランダ東部のカトリック系ナイメーヘン大学へ進学して心理学を学び、そこで学位を取得する。1965年から同大学の心理学研究室でスタッフ研究員になり、1972年助教授、1980年教授、そして2002年には退職して現在同大学の名誉教授となっている。カウンセリング技法としての自己対面法(SCM)と、SCMの臨床実践をもとに、従来の自己論の理論的課題を克服して包括的に整理した対話的自己の理論は、いま世界的に注目されている。1992年にSCM財団を設立、2000年に国際対話的自己学会を設立し、臨床・教育実践、その理論的側面において国際的な指導的存在となっている

溝上慎一[ミゾカミシンイチ]
1996年、大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了、博士(教育学)。京都大学高等教育研究開発推進センター助教授。専門分野は自己論・青年期論・大学教育研究

水間玲子[ミズマレイコ]
2001年、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了、博士(教育学)。福島大学人文社会学群人間発達文化学類助教授。専門分野は自己意識研究、青年期論

森岡正芳[モリオカマサヨシ]
1982年、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程退学、博士(教育学)。奈良女子大学文学部教授。専門分野は臨床心理学・物語心理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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