出版社内容情報
人は文化の一員として生まれ、文化のなかで成長する、したがってその発達の仕方は文化によって大いに異なる--この当然の事実は、本書以前には明確に論じられてきませんでした。欧米生まれの心理学は、欧米文化のなかでの発達を人間発達の当然の姿として普遍化し、研究してきたのです。本書は、自らの経験からこの点に疑問を抱いた著者が、発達理論の周到な研究と人類学や社会学、言語学から新聞記事にわたる圧倒的な資料によって、発達が文化の過程そのものであることを詳細に説き示したもので、昨年度、アメリカの最も優れた心理学書に贈られるウィリアム・ジェイムズ図書賞を受賞した話題作です。
人間であるということには、人類の実践の長い歴史に由来する可能性と限界を併せ持つという面があります。同時に、各世代は、目の前の状況に応じて、人類の文化的・生物学的遺産を作り直したり、取り入れたりし続けます。この本のねらいは、人に発達の文化的パターンについてに理解を深めることです。そのために、複数のコミュニティの実践と伝統の間に見られる類似性や違いを理解させてくれるような、規則性について調べていきたいと思います。文化過程について語ることを通して、あらゆるコミュニティの生活の営みの中でルーチンとなっているやり方(事の慣習的な運び方)に対する皆さんの注意を喚起したいと思っています。文化を個人の国民性や民族性と同じ意味で用いるのではなく、人々が属するコミュニティの文化の実践や伝統への参加に焦点を当てます。(「第1章」より)
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【関連書籍】
『 二歳半という年齢 』 久保田正人著 (定価2310円 初版1993を復刊)
『 文化心理学 』 M・コール著 (定価5775円 2002)
『 ことばの前のことば 』 やまだようこ著 (定価2730円 1987)
【新 刊】
『 質的心理学の方法 』 やまだようこ編 (定価2730円 2007.9月)
内容説明
かくもダイナミックで変化に富む発達のすがた!人間が育つ多様な文化コミュニティへの深い理解から西欧中心の普遍的発達観を一新する画期作。2005年度ウイリアム・ジェイムズ賞受賞作。
目次
第1章 この本がめざす方向を照らす概念、そして人の発達が文化的であるとはどういうことか
第2章 文化活動への参加の変容としての発達
第3章 個人、世代、そしてダイナミックな文化コミュニティ
第4章 家族やコミュニティでの子育て
第5章 コミュニティにおける個人の役割の発達的移行
第6章 相互依存性と自律性
第7章 道具で考えること、そして、文化の施設・制度(インスティテューションズ)
第8章 文化の営みの中で「導かれた参加」を通して学ぶこと
第9章 文化の変容とコミュニティ間の関係
著者等紹介
ロゴフ,バーバラ[ロゴフ,バーバラ][Rogoff,Barbara]
現在、カリフォルニア大学サンタクルーズ校教授(発達心理学)。カリフォルニア大学総長が特に傑出した業績を持つ教職員に与える名誉職であるUniversity of California Presidential Chairについている。1977年にハーバード大学で博士号(Ph.D.)を取得した後、ヴィゴツキーを中心とした社会・文化・歴史的心理学の潮流を代表する学者のひとりとして、サンペドゥロ(グアテマラ)のマヤのコミュニティでの自らの体験を生かした視点からオリジナリティの高い研究を展開し、Human Developmentの編集委員長を務めるなど、国際的に発達心理学をリードする役割を担っている。現在は、学校がまだ普及していないコミュニティ(特に北米・中米先住民コミュニティ)において、社会的相互行為が学びを支える過程の文化的バリエーションに注目した研究を展開している
當眞千賀子[トウマチカコ]
現在、茨城大学人文学部助教授(発達心理学)。クラーク大学で博士号(Ph.D.)を取得した後、カリフォルニア大学サンタクルーズ校でポストドクトラルフェローとしてロゴフと共同研究を行うとともに、カリフォルニアの小学校に通う日本人児童が現地校の文化的営みを通して体験する学びについての研究に取り組む。現在は、現場の人々とともに実践を形成していく過程の中に研究を織り込む方法として「形成的フィールドワーク」を提案し、異なる年齢の人々が互いに育み合うことを支える実践のあり方に着目した研究を展開している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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