出版社内容情報
企業の健全な運営と危機管理に社会心理学の成果をもって応えるこのシリーズの第5巻は、いわゆる企業や職務に対する誇りや忠誠心の問題を取り上げます。具体的な事例として大規模な消防官の調査に基づいて、職業的な自尊心がどのような条件のもとで育まれ、あるいは阻まれるのかを初めて実証的に明らかにしました。もちろん、この調査は、規模の大小を問わず、他のいかなる組織にも共通する問題のサンプルとして選ばれています。
ひとつの職業領域にも、さまざまな仕事がある。職能的自尊心は、難しい技能を要求される職業・職種に対応する職業的自尊心の一次元である。他方、職務的自尊心は、それぞれの仕事の社会的責任、社会的貢献度の自覚によってもたらされるものである。本書は、この二次元を主要なツールとして社会的使命感をこうちくしようという観点のもとで、研究を展開している。通常の社会調査とは異なり、典型的なノブレス・オブリジェである消防官の重点調査が、職業的自尊心の二次元をくっきりと浮き彫りにしている。職業的威信のレビューと、本書のモデル構築に先立つ多職業のサンプルにおける社会心理学調査が、本観点の普遍性の根拠となっている。働き甲斐の創出と職場における違反行動の予防を視野に職位、職種を見直そう、整備しようという観点に必要な社会科学をコンパクトに纏める努力したつもりである。(「まえがき」より)
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【関連書籍】
『 交通事故はなぜなくならないか 』 ジェラルド・J・S・ワイルド著 (定価3675円 2007)
『 安全・安心の心理学 』 海保博之・宮本聡介著 (定価1995円 2007)
『 リスク・マネジメントの心理学 』 岡本浩一ほか著 (定価3990円 2004)
内容説明
本書は、どのような人の職業的使命感が高く、どのような人の職業的違反行為が低いかについて、職種、職位、組織内市民行動、組織風土などの観点から分析することによって、職業的使命感を高める方略を探ろうとする立場で書いたものである。
目次
序章 社会技術としての職業的使命感研究
第1章 職業威信の先行研究
第2章 消防という仕事と調査の概要
第3章 予備的分析
第4章 職種・職位と職業的自尊心
第5章 属人風土と職業的自尊心
第6章 職業的使命感と社会技術
著者等紹介
岡本浩一[オカモトコウイチ]
東洋英和女学院大学人間科学部教授。内閣府原子力委員会専門委員兼務。1980年、東京大学文学部卒業。1985年、東京大学大学院社会学研究科第一種博士課程単位取得満期退学。2000年、社会学博士(東京大学)。1993~94年、フルブライト助教授としてオレゴン大学のポール・スロヴィック教授のもとよりリスク心理学の手法をわが国にもたらす。JOC臨界事故、東電シュラウド傷不報告事例など多くの事故・不祥事で政府の調査委員をつとめる。2001~2006年、(独)科学技術振興機構社会技術研究開発センター(日本原子力研究所社会技術研究システムから移管・改組)社会心理学研究グループ・リーダー兼務。また、学校法人裏千家学園茶道専門学校理事を兼務
堀洋元[ホリヒロモト]
日本大学文理学部非常勤講師。1994年、日本大学文学部文理学部心理学科卒業。1997年、日本大学大学院文学研究科心理学専攻博士前期課程修了。2001年、日本大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。2002年より日本原子力研究所社会技術研究システム社会心理学研究グループ研究員(後に移管・改組により、(独)科学技術振興機構社会技術研究開発センター社会心理学研究グループ研究員)
鎌田晶子[カマダアキコ]
文教大学人間科学部専任講師。1992年、日本大学文理学部心理学科卒業。2000年、日本大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得満期退学。2002年、博士(心理学)。2001年、日本原子力研究所社会技術研究システム社会心理学研究グループ研究員、2004年より現職
下村英雄[シモムラヒデオ]
労働政策研究・研修機構職務キャリア分析部門副主任研究員。1991年、筑波大学第2学群人間学類卒業。1997年3月、筑波大学大学院博士課程心理学研究科単位取得満期退学。2003年、博士(心理学)。1997年日本労働研究機構キャリアガイダンス研究担当研究員。組織名変更および昇進により2003年より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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