出版社内容情報
小説作品における作者はどこまでその<主体>として存在するか? 読みの現場から「機能としての作者」という見方を鮮明にして、「作者の死」を唱えるテクスト論を超え、漱石、潤一郎、大江、村上春樹らの作品の意表をつく読み方を示す。
・「ポストモダン思想の批判的再検討が始まっているが、、テクスト論も俎上に上ることも多くなった。流行が去るとただ忘れられることが多いなかで、こういう対話は貴重である。」評者:石原千秋(中国新聞、徳島新聞、茨城新聞など)
内容説明
「作者は死んだ」とするテクスト論的な読みを超えて、「機能としての作者」という視点から、リクール、ラカンなどを援用しつつ、日本文学に意想外の読みの地平を拓く。
目次
序 語り直す機構―「機能としての作者」と『舞姫』
1 視角としての「現在」―谷崎潤一郎(遡行する身体―『痴人の愛』の文化批判;「物語り」えない語り手―『卍』と大阪言葉;表象としての「現在」―『細雪』の寓意)
2 「現在」への希求―大江健三郎(「戦い」の在り処―『芽むしり仔撃ち』の「戦争」;「鏡」のなかの世界―『個人的な体験』のイメージ構築;希求される秩序―『万延元年のフットボール』の想像界と象徴界)
3 重層する時空(生きつづける「過去」―『夢十夜』の表象と時間;審美的な兵士―『野火』の倫理と狂気;生き直される時間―『ノルウェイの森』の「転生」)
著者等紹介
柴田勝二[シバタショウジ]
1956年兵庫県生まれ。大阪大学大学院(芸術学)博士課程修了。現在、東京外国語大学教授
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