出版社内容情報
現代はあらゆるモノや記憶を保存しようとする時代です。文化遺産の範囲は、ルーヴル美術館にならぶ名画から、原爆ドームにまで及び、廃坑や刑務所、震災跡までが博物館として公開されています。文化遺産の保存ははたして善か? 複製技術はホンモノを超えられるのか? 戦争遺産・産業遺産は歴史の意味をどのように物語るのか? 日本、フランスを中心に7ヶ国200ヶ所以上を訪れ、文化遺産の本質に切り込んだ初の社会学書。
ヨーロッパでは、文化遺産保存の戦略は、その意義や目的を与える「反射のプロセス」によって特徴づけられる。文化遺産は、「世界の博物館的二重化」によって、今日的な意義を帯びるのである。文化遺産として認知されるものが存在するためには、社会がなんらかの鏡を通じて自らの姿を知ろうとすること、社会が、その特定の場所やモノ、モニュメントを、自らの歴史と文化の明白な反映として捉えることが必要である。社会が、自らのモノや風土を思索するための常套手段とするためには、社会はその姿を映し出す反射鏡(=文化遺産)を作り出さなければ成らないのである。(文化遺産と象徴的価値より)
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【関連書籍】
『 コモンズをささえるしくみ 』 宮内泰介編 (定価2730円 2006)
『 現実の社会的構成 』 バーガー、ルックマン著 (定価3045円 2003)
『 歴史的環境の社会学 』 片桐新自編 (定価2520円 2000)
内容説明
文化遺産の保存は善か?戦争遺産は戦争を抑止できるのか?産業遺産は地域を甦らせることができるのか?ユネスコ世界遺産から廃鉱、戦跡まで、あらゆるものが保存され、観光名所と化す現代。増殖する文化遺産・博物館・美術館を縦横に論じ、“保存する時代”の視線と欲望の危うさを問う。
目次
第1章 文化遺産への社会学的アプローチ
第2章 モノと記憶の保存
第3章 戦争と死者の記憶
第4章 真正か複製か
第5章 地域の集合的記憶―フランス
第6章 地域の集合的記憶―日本
第7章 かたちのないものの遺産化
終章 保存する時代の未来
著者等紹介
荻野昌弘[オギノマサヒロ]
1957年生まれ。パリ第七大学大学院社会科学研究科博士課程修了、社会学博士。関西学院大学社会学部教授。専攻は文化社会学、歴史社会学
小川伸彦[オガワノブヒコ]
1962年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。京都大学文学部助手をへて、奈良女子大学文学部助教授。専攻は文化社会学
ジュディ,アンリ・ピエール[ジュディ,アンリピエール][Jeudy,Henri‐Pierre]
1945年生まれ。フランス国立科学研究センター研究員。専攻は文化社会学、コミュニケーション論
脇田健一[ワキタケンイチ]
1958年生まれ。関西学院大学大学院社会学研究科博士課程後期課程単位取得退学。滋賀県立琵琶湖博物館主任学芸員をへて、岩手県立大学総合政策学部助教授。専攻は環境社会学・環境民俗学
山泰幸[ヤマヨシユキ]
1970年生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。ソウル大学校社会科学大学院博士課程在学。専攻は文化人類学
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感想・レビュー
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chatain1008
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