出版社内容情報
プルースト『失われた時を求めて』は、間違いなく今世紀を代表する小説です。その長大さにもかかわらず現在も多くの読者を魅了しつづける秘密は何か。著者は、自閉的、ナルシシズムなどとも批判されるプルーストの自己中心主義のなかに「他者」へと開かれていく反転の契機を見、その作品世界を、内がそのまま外につながるメビウス的宇宙、海がいつの間に陸に変容するエッシャー的世界と特徴づけます。「変形することは事物をありのままに見ることである」と考えるプルーストの創造の論理を見事に探り当てた新鮮なプルースト論です。
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【関連書籍】
『 あらすじと読みどころで味わう世界の長編文学 』 土田知則編 (定価1995円 2005)
『 現代文学理論 』 土田知則著 (定価2520円 1996)
『 文学理論のプラクティス』 土田知則著 (定価2520円 2001)
内容説明
変形すること、それは事物をありのままに見ること。『失われた時を求めて』は、内がそのまま外につながるメビウス的宇宙、海がいつの間にか陸に変容するエッシャー的世界である。個人的なものを徹底することで普遍的なもの、他者との交通の空間に開かれていったプルーストの創造の論理を見事に探り当てた新鮮なプルースト論。
目次
1 メビウス的空間
2 エッシャーあるいは必然の環―絵画から隠喩へ
間奏曲 異交通あるいはテクスト生成の場―コンブレーから一角獣の棲む街へ
3 時間・自己・他者
4 反転するトポス―作品構造としてのメビウス
付論(ポール・ド・マンの過ち?;「寝違えられた」一語;西洋と東洋のはざまに;直喩はどこに消えたのか)