歴史と表象―近代フランスの歴史小説を読む

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 316p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784788505940
  • NDC分類 950.2
  • Cコード C1097

出版社内容情報

 革命と戦争と民衆に彩られたフランス19世紀,歴史小説の黄金時代。歴史は小説空間にどのような影を落としているか。事実と虚構の皮膜にせめぐ歴史と時代の社会的想像力との張りつめた関係をバルザック,デュマ,フロベール,ゾラらの傑作に読む。

 ロマン主義時代には、フランス革命の余波を受けて人々の歴史認識の枠組みが大きく変わった。人間と社会の有様がかなりの程度まで歴史によって規定されるという意識が、当時の集合心理性の中で根づいたのであり、人間と社会を歴史の相のもとに捉えようとする態度がはっきりと現れてくる。そのことは歴史叙述の方法のみならず、小説そのものにも無視しがたい変革をもたらすことになった。ティエリやバラントの示されるように、ロマン主義期の歴史学はその叙述において科学性と同じに芸術性を標榜し、新たなレトリックを求めていたから、文学がもたらし得る貢献に無頓着ではありえなかった。歴史叙述の価値は、事実の正しい解釈によって保証されるだけではなく、一つの詩学によって支えらると考えられたのである。他方、歴史小説はたんに物語を語ることに終始するのではなく、歴史の解読に寄与できるのだという自負を持っていた。歴史と小説は、真実と虚構を排除しあうのではなく、どちらも語りと認識と言うふたつの次元を併せもつディスクールであり、人間の経験を理解するための相互補完的なディスクールだとされたのである。(「むすび」より)


 ・西日本新聞 97.7.20
 ・東京新聞 97.7.13
 ・「本書を基礎に新たな歴史小説論が構想できよう。」(朝日新聞 97.6.22)

------------------------------------------------------------------------------

 【関連書籍】
 『 禁じられたベストセラー 』 R・ダーントン著 (定価3990円 2005)
 『 「パリの秘密」の社会史 』 小倉孝誠著 (定価3360円 2004)
 『 知識の社会史 』 P・バーク著 (定価3570円 2004)

 【新 刊】
 『 名編集者エッツェルと巨匠たち 』 私市保彦著 (定価5775円 2007.3月)

内容説明

フランス19世紀は革命と戦争と民衆によって特徴づけられ、それゆえ歴史小説の黄金時代でもあった。バルザック、デュマ、フロベール、ゾラなどの傑作群、さらには20世紀のプルースト、ユルスナールまで含めて、歴史と物語のエクリチュールのせめぎあいのなかに、作品が当時の社会的想像力と切り結んだ説話空間を鮮かに開示する。

目次

序論 歴史小説の基本問題
第1章 歴史小説の誕生
第2章 歴史叙述の論理とレトリック―ティエリとその周辺
第3章 ロマン主義時代の歴史小説
第4章 フランス革命の表象―デュマとエルクマン=シャトリアン
第5章 十九世紀文学における民衆―バルザック、ミシュレ、ゾラ
第6章 フロベールの『感情教育』と革命の詩学
第7章 知・歴史・神話―ゾラの『壊滅』を読む
第8章 戦争と文学―プルースト『失われた時を求めて』
第9章 皇帝の回想から家族の年代記へ―ユルスナールと歴史

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

nranjen

6
19世紀の時代小説、大衆小説には含まれていない「歴史小説」というジャンルを論じた本。その中でも「民衆・大衆」という象徴の変遷が描かれている箇所が非常に興味深かった。2020/04/01

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/435723
  • ご注意事項