出版社内容情報
語る行為に先立って物語内容は存在しない。誰が,何のために,誰に向かって語っているのかという視点から読み直すとき,よく知られた日本文学の名作--『雁』『草枕』『卍』『黒い雨』も全く新しい姿を現わす。物語行為として日本近代文学を読む試み。
日本の古典物語研究においては、語りの場の性格や、観察、発話、記述という諸行為に関与する人物のあいだの関係など、語りの行為性に関わる諸要素に十二分な注意が払われてきたようだ。しかし、こと近代の小説にかぎっては、語りのパフォーマンス性は大方投函に付されてきたといっても過言ではないように思われる。少なくとも、作家の人生を再現したり、テーマを追求したりすることに比べて、誰が、何のために、どういう方法で、誰に向かって、どういう反応を予想して語っているのか、という語りのコンテキストに読みの重点がおかれることは少なかったのではないだろうか。(「あとがき」より)
・「図書新聞」96.12.21 芳川泰久氏評
・熊本日日新聞 96.9.15 平川祐弘氏評
・「すばる」96.10月 高山 宏氏評
・「出版ニュース」96.9上
・朝日新聞 夕刊 96.7.25 「お薦めの3冊」斉藤美奈子氏
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【関連書籍】
『 ことばの意味とは何か 』 F・レカネティ著 (定価3990円 2006)
『 影響の不安 』 H・ブルーム著 (定価4200円 2004)
『 創造された古典 』 ハルオ・シラネ、鈴木登美編 (定価4200円 1999)
内容説明
物語行為として日本近代文学を読む―語る行為に先立って物語内容は存在しない。誰が、何のために、誰に向かって語っているのかという視点から読み直すとき、よく知られた日本文学の名作―『雁』『草枕』『卍』『黒い雨』―も全く新しい姿を現わす。
目次
序章 方法論に代えて
第1章 物語の拒絶、物語の侵食―『草枕』
第2章 見る女・見ない男 語る女・黙る男―『雁』
第3章 話声と記述の饗宴―『卍』
第4章 記述への執念―『黒い雨』
終章 物語論としての物語―金井美恵子の場合を軸として