出版社内容情報
あらゆる国民国家は,国家と国民の独自性と優越性を示す神話を必要とし,これが国民文化論を聖域に押し上げてきた。この自国への「過剰」で,閉ざされた関心をどのように開きうるか。ボーダーレス化する国際社会に対応する新たなメンタリティの探求。
文明や文化の概念がイデオロギーであるということは、文明や文化を論じる文章の多くがその担い手である国民や国家を論じている事からも明らかであるが、文明や文化が国家イデオロギーであることを明確に指摘し、その角度から文明と文化の概念を論じた文章はこれまでほとんど存在しないことをどう考えればよいのか。
ネイションやナショナリズムが国益や国家エゴイズムに結びついていることは、だれの目にも明らかだから批判の対象になりやすいし、またその当事者たちを越えて普遍的な価値として認められることは難しい。これに対して文明や文化は、はじめから国家や政治的利害を超えた至高の理念として意識されており、一国の利益のためというのであれば同意しかねる場合でも、文明や文化のためであれば納得されるだろう。そのよい例は戦争や侵略の場合である。じっさいには少数の特権者や国家利益のためでしかない行為が、文明や文化の名において擁護され、あるいは批判される。同じようなケースは国内問題の場合でも考えられるだろう。文明や文化は国民的アイデンティティの向かうべき方向を指し示しており、国民統合のための強力なイデオロギーである。(「南蛮屏風の語るもの」より)
・「文明」と「文化」の概念を批判(産経新聞 95.12.14 西谷修氏評)
・「図書新聞」95.12.9
・「週刊東洋経済」95.11.18
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【関連書籍】
『 〈民主〉と〈愛国〉 』 小熊英二著 (定価6615円 2002)
『 〈日本人〉の境界 』 小熊英二著 (定価6040円 1998)
『 単一民族神話の起源 』 小熊英二著 (定価3990円 1995)
【新 刊】
『 モハメド・アリ 』 C・レマート著 (定価3465円 2007.7月)
内容説明
日本文化論の解剖学。あらゆる国民国家は、国家と国民の独自性と優越性を示す神話を必要とする。これが国民文化論を聖域に押し上げてきた。この国家へ閉ざされた文化を、いかに開きうるか。
目次
序 南蛮屏風の語るもの、あるいは世界システムと国民文化について
1 国家イデオロギーとしての文明と文化
2 地球時代の民族=文化理論
3 日本人論・日本文化論を問う―自国へのこの「過剰」な関心はどこから来るか?