出版社内容情報
建築における「意味」とは、例えば次のようなことだ。建物の入り口(玄関)の形態について考えてみよう。モダニズムの論理では、入り口の形態は「人が建物の中にはいれる」「はいりやすい」という機能から生まれるのであり、そこには伝統的、習慣的形態を生のまま使うことは可能な限り排除された。ポスト・モダニズムの論理ではこういうことになる。入り口(玄関)の形態は、西欧ではルネッサンス以来、ギリシア神殿のファサードを模したペディメント(切妻破風)を使うのが習慣的であった。ある国、ある地域で長い間使われてきた慣習的な形態は、その地の人々のあいだである一定の「意味」をもつ。ペディメント=建物の入り口という一対一の対応である。それは、「言語としての建築」における一つの「単語」である。そういった「単語」としての「部分の形態」をさまざまに組み合せて建築に用いる -- 建築をつくる -- ことは、モダニズムがいうような反動的で忌避すべきことではなく、むしろすすんで肯定すべきことなのである。(本文より)
・「THE LIFE CREATOR」93.夏
・「日刊建設新聞」93.7.19
・「建築文化」93.9月
・「at」93.3
・「住宅建築」93.9 松隅 洋氏評
・「建築知識」93.9
・「NIKKEI ARCHITECTURE」93.8.2
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【関連書籍】
『 スケートボーディング、空間、都市 』 I・ボーデン著 (定価5775円 2006)
『 空間管理社会 監視と自由のパラドックス 』 阿部潔・成実弘至編 (定価2520円 2006)
『 エモーショナル・デザイン 』 D・A・ノーマン著 (定価3045円 2004)
内容説明
鉄とガラスとコンクリートの無機質なモダニズムからポスト・モダニズムへ、現代建築は豊かな〈意味〉をとりもどしたが、それによってわれわれの住の現実はどう変わったか。空間をめぐる思考と現実のギャップに眼をこらしながら、住まうことへの夢を激しく鼓舞する。
目次
現代建築の流れ
序章 建築におけるポスト・モダニズム
1 現代建築の諸様式―建築のイデオロギー
2 現代の建築空間―空間のアルケオロジー
3 宇宙・建築・身体―建築のオントロギー
4 現代建築の手法―建築言語とテクノロジー
5 現代消費社会と建築―建築のフェノメノロジー
終章 現代建築家