出版社内容情報
ユング派の旗幟を鮮明にした初期の論考から,療法一般の原理的・理論的考察,技法と実際の吟味,そして療法家の教育への提言にいたるまで,理論と実際の両面から我国心理療法の発展をリードしてきた著者の,療法家としての思索と体験の初めての集成。
まえがき
Ⅰユング派の心理療法
ユング派の心理療法/ユング派の分析における技法と理論/夢分析による学校恐怖症高校生の治療例/夢のなかの治療者像/心理療法におけるイニシエーションの意義/心理治療における文化的要因
Ⅱ心理療法の理論的位相
心理療法と精神医学/心理療法における場所・時間・料金について/心理療法における「受容」と「対決」について/精神療法の深さ/「心因」ということ/心理療法における学派の選択について/心理療法家にとっての治療理論
Ⅲ心理療法の技法と実際
遊戯療法/箱庭療法の発展/箱庭療法と転移/夫婦関係のカウンセリング/家庭内暴力の心理療法/児童の治療における親子並行面接の実際/境界例の心理療法について
Ⅳ心理療法家の教育と訓練
わが国における治療者の訓練/心理療法家の教育と訓練/心理療法家の専門性について/調査官の仕事
Ⅴ心理療法と心理学研究法
研究法としての精神分析/事例研究の意義と問題点/面接法の意義/ユングのタイプ論に関する研究
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chidori
0
「そして、われわれはある一つの学派を選びそれにcommitするということを成しつつ、それをドグマにしてしまわないという、一種の二律背反的なことをなさねばならないのである。このような自覚なしに、一つの学派を選ぶことは極めて危険なことであろう。」 日本的ユング派という困難なアイデンティティを確立しながら、教育や精神医療と言った既存の領域に楔を打ち込むように臨床心理学の領域を広げて行った。30年以上も前の論文集であるが、また読み返す必要がある。2013/07/06
たらこ
0
心理療法の発展の歴史を感じられる本書。転移の質(「強さ」と「深さ」)についてはもう少し自分でも考える必要あり。本書から新しい知識を学ぶ、というよりも、本書が提出した論点をこれから深く考えていくことが必要となる。2011/09/12
nvwr
0
本書の隅っこの話しだけどMBTIについて、河合隼雄がここまで詳しく述べているとは知らなかった。全体見て、これは名著を手にしたなぁという感触。何人ものユング派の先生方が勧めるだけあった。2023/10/20