内容説明
密室に出没する幽霊の謎を追うフェル博士。本格派の巨匠カー晩年の最高傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
20
カー晩年の作で久々のフェル博士物だそうだ。ちょっともたつく感はあるが、まだまだ創作意欲は衰えていない。あり得ない出来事をきっちり説明するために考え抜いた構成……この執念に拍手を送りたい。解明の光を小出しにして読者を迷わせ導く書き方も渋く健在で、闇の中を手探りで進むようなスリルを満喫できる。謎の美女フェイ、「茶色の髪にハシバミ色の瞳」のディードル、「見るからに染めた赤毛」「刺すような目」で茶目っ気たっぷりのエシー叔母さん……女性たちから目が離せない。昼夜=明暗の入れ替わりもプロットにしっかり生かされている。2013/07/10
星落秋風五丈原
19
カーのフェル博士シリーズ。ニックを通じて、バークリー家のねじれた血縁関係が語られ、次に緑樹館の持ち主であった老判事を巡るエピソードが紹介。二つの前振りによって読者の頭には「何か奇妙な出来事が起こりつつある」という認識ができる。登場人物がいやにもったいぶった言い回しを使ったりするのが、ある種の犯罪が進行中にしては、えらく悠長に思えた。女性と電撃的に恋に落ち、しかる後に彼女の過去を知るため、語り手であるガレットは『死が二人をわかつまで』のディックと同じく、愛と疑惑の間を行きつ戻りつする。2005/08/23
ホームズ
10
謎の幽霊や発砲事件ついては初期のカーの怪奇趣味に戻った感じがして良かったとは思いますが結末は残念。せっかくフェル博士がいるのにあまり活躍してなかったし。2冊続けて外れてしまってるから初期の良い作品を読もうかな。2010/05/08
カーゾン
7
M:旅行中に沖縄県のBOOKOFFの値下げ本コーナーで見つけ購入。時々こういう”掘り出し物”あるから無視出来ない。 さて、60年代三連続フェル博士ものの中では「月明かりの闇」よりは優れていると断言出来る。(仮面劇場~は積読) 密室にするトリックはあの作品の焼き直しね、と判った。相変わらず恋愛する2人は犯人ではなく、犯人は絞りやすいか。 この作品もフェル博士のはぐらかしや仄めかしが多く、登場人物も互いの発言の腰を折ることの繰り返しだが、”カーマニア”ならしゃーなしと許せるかと。初心者は知らん(苦笑)2023/06/22
冬木楼 fuyukirou
7
初読みのカー作品。カーを読んだ事が無いのは良くない(?)ようなので、適当にチョイス。 始めは読みにくかったが、読み進んでいくうちに面白くなり一気に読了した。 訳文がぎこちない(失礼)のかと思ったが、きっと原書も騒々しいおしゃべりともったいぶった言い回しにあふれているのだろうと推量する。2015/07/11