出版社内容情報
コロナ禍では医療従事者が不眠不休で治療にあたってもなお医療資源が不足している。どのような理由で医療資源を配分して、誰を、どの命を優先するのかを判断するトリアージをおこなうことの是非が、医療現場でも社会全体でも議論されている。
「助かる命を優先する」という効率的な医療の必要と「その選別から漏れる患者の命と尊厳を守るべきだ」という考えのはざまにある現在の日本社会で、トリアージをおこなう根拠や倫理的な責任を、医療や宗教、哲学の視点から多角的に考え、問題点を提起する。
「自宅待機」などの政府方針や医療界での議論など、日本の事例はもちろん、台湾やイタリア、ドイツなどの実情にも目を向け、「命の選別とその基準」をめぐる課題と正面から向き合い、検証した貴重な成果。2021年8月に開催した日本学術会議のシンポジウムでの報告に書き下ろし原稿を加えた論集。
【目次】
序文 いまトリアージを考える 土井健司
第1部 世界の事例から考察する
第1章 コロナ・トリアージと人間の尊厳――イタリアとドイツの事例に即して考察する 加藤泰史
第2章 新型コロナ禍でのトリアージと患者の人権をめぐるフランスと欧州人権機関 建石真公子
第3章 台湾の集中治療のトリアージ制度――新型コロナパンデミック時の対応と課題 鍾宜錚
第4章 新型コロナパンデミックでのトリアージをめぐる日本の医療界での議論 竹下 啓
第2部 命の選別を考える
第5章 コロナ禍で根拠あるトリアージは可能か 島薗 進
第6章 トリアージと人権に関する哲学的覚え書き 一ノ瀬正樹
第7章 選別なきトリアージとトリアージなき選別――「トリアージ」という語をめぐる混乱と錯綜 安藤泰至
おわりに 田坂さつき
目次
第1部 世界の事例から考察する(コロナ・トリアージと人間の尊厳―イタリアとドイツの事例に即して考察する;新型コロナ禍でのトリアージと患者の人権をめぐるフランスと欧州人権機関;台湾の集中治療のトリアージ制度―新型コロナウイルス感染症パンデミック時の対応と課題;新型コロナウイルス感染症パンデミックでのトリアージをめぐる日本の医療界の議論)
第2部 命の選別を考える(コロナ禍で根拠あるトリアージは可能か;トリアージと人権に関する哲学的覚書;選別なきトリアージとトリアージなき選別―「トリアージ」という語をめぐる混乱と錯綜)
著者等紹介
土井健司[ドイケンジ]
1962年、京都府生まれ。関西学院大学神学部教授。専攻は宗教学、生命倫理学
田坂さつき[タサカサツキ]
1959年、栃木県生まれ。立正大学文学部教授。専攻は古代ギリシャ哲学、臨床哲学
加藤泰史[カトウヤスシ]
1956年、愛知県生まれ。椙山女学園大学国際コミュニケーション学部教授、一橋大学名誉教授。専攻はカント、ドイツ観念論、近代日本哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。