自殺の歴史社会学―「意志」のゆくえ

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自殺の歴史社会学―「意志」のゆくえ

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  • サイズ B6判/ページ数 283p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784787234094
  • NDC分類 368.3
  • Cコード C0036

出版社内容情報

厭世死、生命保険にかかわる死、過労自殺、いじめ自殺という4つの事例をもとに、20世紀初頭から現在までの自殺と社会をめぐる語りを跡づける。それを通して、遺族の悲嘆をよそに、自殺を能弁に語ってしまう日本社会の歴史的な屈曲を明らかにする。

序章 「意志」のゆくえ 貞包英之

 1 自殺と「意志」の関わり

 2 自殺の「意味」

 3 自殺の理論の検討



第1章 自殺を意志する――二十世紀初頭における厭世自殺 貞包英之

 1 厭世自殺という謎

 2 自殺を診断する

 3 自殺を隠す

 4 厭世自殺を装う

 5 厭世自殺の衰退?



第2章 自殺を贈与する――高度成長期以後の生命保険に関わる自殺 貞包英之

 1 自殺の「貨幣化(ルビ:マネタイズ)」

 2 生命保険の変質と浸透

 3 贈与としての死

 4 エコノミーの変容



第3章 自殺を補償する――二十一世紀転換期の過労自殺訴訟 元森絵里子

 1 過労自殺という社会問題

 2 自殺の「意志」の現代的転換――精神障害と法的免責、社会問題化

 3 過労自殺の社会問題化――「過労死」から「過労自殺」へ

 4 過労自殺の法理論――過重労働→精神障害→自殺のリンケージ

 5 過労自殺の運用――曖昧化される社会問題化と精神医療化

 6 「意志」をめぐる布置の変化



第4章 自殺を予見する――現代のいじめ自殺訴訟と子ども・教育 元森絵里子

 1 いじめ自殺というスキャンダル

 2 いじめ自殺裁判の立論とその困難――損害賠償請求裁判というアリーナ

 3 自殺と学校の責任のミッシングリンク――予見可能性の壁をめぐる初期の攻防

 4 予見可能性の判断――判断基準のゆるみと維持

 5 下がる予見可能性の壁、揺るがぬ法規

 6 子どもの意志、教育の責任



第5章 自殺に対応する――さまざまな現場、無意識の協働 野上 元

 1 自殺の対応――「現場」に注目すること

 2 自殺に対処する――何が起こったのか

 3 自殺を判定する――これは自殺か

 4 自殺を報知する――誰に何をどのように知らせるべきか

 5 自殺対策を推進する――誰が誰を救うのか

 6 自殺対応の社会学のために



あとがき 元森絵里子

貞包 英之[サダカネ ヒデユキ]
1973年生まれ。山形大学基盤教育院准教授。専攻は社会学、消費社会論、歴史社会学。著書に『地方都市を考える』(花伝社)、『消費は誘惑する 遊廓・白米・変化朝顔』(青土社)、共著に『未明からの思考』(ハーベスト社)、論文に「「戦後」という時代の同一性」(「ライブラリ相関社会科学」第8号)など。

元森 絵里子[モトモリ エリコ]
1977年生まれ。明治学院大学社会学部准教授。専攻は歴史社会学、子ども社会学。著書に『語られない「子ども」の近代』『「子ども」語りの社会学』(ともに勁草書房)、共著に『子どもと貧困の戦後史』(青弓社)、論文に「社会化論という想像力をめぐって」(「年報社会学論集」第22号)など。

野上 元[ノガミ ゲン]
1971年生まれ。筑波大学人文社会系准教授。専攻は歴史社会学。著書に『戦争体験の社会学』(弘文堂)、共編著に『歴史と向きあう社会学』(ミネルヴァ書房)、『戦争社会学の構想』(勉誠出版)、『戦争社会学ブックガイド』(創元社)、『カルチュラル・ポリティクス1960/70』(せりか書房)など。

内容説明

厭世死、生命保険に関わる死、過労自殺、いじめ自殺という4つの事例をもとに、20世紀初頭から現在までの自殺と社会をめぐる語りを跡付け、同時にいま、メディアや警察の「現場」で自殺がどう扱われるのかも浮き彫りにする。それを通して、自殺を能弁に語ってしまう日本社会の歴史的な屈曲を明らかにする。

目次

序章 「意志」のゆくえ
第1章 自殺を意志する―二十世紀初頭における厭世自殺
第2章 自殺を贈与する―高度成長期以後の生命保険に関わる自殺
第3章 自殺を補償する―二十一世紀転換期の過労自殺訴訟
第4章 自殺を予見する―現代のいじめ自殺訴訟と子ども・教育
第5章 自殺に対応する―さまざまな現場、無意識の協働

著者等紹介

貞包英之[サダカネヒデユキ]
1973年生まれ。山形大学基盤教育院准教授。専攻は社会学、消費社会論、歴史社会学

元森絵里子[モトモリエリコ]
1977年生まれ。明治学院大学社会学部准教授。専攻は歴史社会学、子ども社会学

野上元[ノガミゲン]
1971年生まれ。筑波大学人文社会系准教授。専攻は歴史社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

てくてく

8
副題にある「意志」に注目した自殺の語られ方の変容を分析している。私としては、2章のいわゆる保険金目当ての自殺がいつ登場し、保険金目当ての自殺が建前としてはタブーであるにもかかわらず、期限を定めることで実際には保険金が支払われていること、そして4章のいじめ自殺における「いじめ」と「自殺」の因果関係を裁判所がどう判断したか、が特に面白かった。2020/03/11

あんり

4
あくまで自殺に対する「対応」を追った本。題名からもう少し哲学的な議論をかませた社会学的内容を予想していたので読み終えた時に少し落胆した。2019/11/30

たろーたん

3
自殺の意味付けに対する変遷。自分の意志による自殺(厭世自殺)から、強制された自殺(過労自殺、いじめ自殺)への変化。自殺をめぐる社会的言説では、自分の意志で行う自殺は少なくなり、むしろ環境的な要因から自殺を選ばされるような自殺が増えている。個人的な感想だが、人間の死が、どう有意味かされ、解釈されていくのかミクロにみるのも面白いかもしれない。 「意味のない死は多いが、意味のない自殺はない」エドウィン・S・シュナイドマン2019/02/17

犬養三千代

2
自殺という悲劇 なのだろうか?生命保険と自殺の関連の部分は理解か深まった。自殺予見 子どものいじめによる自殺については 疑問符が残った。判例への道筋がぢ、十分ではないことは解る。命の値段はやはりある。電通の男性が一億六千八百万円。子どもは0か数百万円裁判ってそんなもん、司法の論理形成は 人を平等には扱わない❗2017/03/08

げんさん

1
過労自殺が「自らの意志で死を選んだのではない、精神障害によって自殺させられたのだ」という理屈で原告側が一審で全面勝訴となる。 サブタイトルの「意志」のゆくえの意味は深い。2022/05/17

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